どうなる広島の新スタジアム問題
サンフレッチェの語源となった「3本の矢」にちなみ、午後3時から開始された記者会見。メインスポンサーのエディオン社長でもある、広島の久保允誉会長は旧市民球場跡地を候補地とする独自の建設案「ヒロシマ・ピース・メモリアル・スタジアム」を発表する。 記者会見では、もし「広島みなと公園」に新スタジアムが建設された場合でも、広島はホームとして使用しないとまで明言。1998年の社長就任から携わってきた、広島から去る覚悟も明らかにした。 行政側が推す「広島みなと公園」は中心部から約7km離れた港湾地区にあり、路面電車を利用した場合の所要時間は約1時間。いま現在でも市内有数の渋滞地帯と悪名高く、駐車場を建設しても、あるいはシャトルバスを運行させても渋滞に巻き込まれる。 つまり、アクセス状況は現状からほとんど改善されない。やがては観客動員数が頭打ちになり、スタジアム使用料が現状の年間1億円から、市債への償還金額を含めて大幅に増額されるのが確実な状況と相まって、2年で債務超過に陥ると試算している。 翻って旧市民球場跡地は広島駅前から路面電車で約10分、徒歩でも約20分の距離にある。行政側が「260億円もかかる」として懸念材料にあげている建設費も、ガンバ大阪の新本拠地「市立吹田サッカースタジアム」の寄付金によるスキームを参考に約140億円で収まり、税金も使わないと反論した。 そもそも、なぜ旧市民球場跡地ではダメなのか。記者会見が質疑応答に移った直後のメディアからの質問に、理由の一端を見ることができる。 「被爆から70年以上が経ち、鎮魂の象徴となっている場所の近くでサッカーの試合や催し物、コンサートなどが行われることに違和感がある、という声もある」 生家が旧市民球場跡地そばにあり、焼け野原から復興していく広島の中心部で育った久保会長はシンボルとなった旧市民球場への敬意を表しながら、こんな言葉を紡いでいる。 「スタジアムがひとつの起爆剤となって、あのエリア一帯がスポーツと文化のイベント、そして賑わいの広場となるように議論を尽くしていきたい」