<上海だより>中国インフルエンサー事情(上)ファン獲得のためならまず整形
前回の記事では中国人たちの「自拍(ズーパイ)=自撮り」の根っこにある自尊心の強さ、美へのこだわりについて紹介しました。今回は「網紅(ワンホン)=インフルエンサー」と呼ばれるようなSNSやアプリなどインターネット上で多くの「粉絲(フェンスー)=ファン」を持つ一部の存在が多くの収入を得ており、網紅を目指す若者の増加について取り上げたいと思います。
韓国でプチ整形が一般的に行われていることはかつてよく取り沙汰にされていましたが、中国ではプチ整形にとどまらずかなり極端な整形が増えています。パッチリとした二重の目、キュッと細い顎、ツンと高い鼻、まさに網紅というような整形で整えられた顔を「網紅顔(ワンホンリエン)」と呼び、上海の街中でも頻繁に見かけます。今年では、「網紅セット」と呼ばれる美容整形のメニューもニュースで出回ったほどです。 ある「網紅セット」の詳細を見て見ると、鼻すじで5~10万元(約85~170万円)、鼻尖で3万元(約51万円)、鼻中隔で2万5千元(約42万5千円)、下顎の骨切りで4~5万元(約68~85万円)、など全体で約10~20万元(約170~340万円)とされています。日本の高級美容整形に比べればリーズナブルですが、それでもかなりの費用です。しかし、この整形セットで網紅になって毎月数万元を稼ごう、というような宣伝をよく見かけます。
中国で網紅と呼ばれるインフルエンサーのような存在は、初期はネット小説の作家やブログに始まり、中国版ツイッターであるウェイボーの人気アカウントを経て、今では中国版ラインのようなWeChatというSNS・メッセンジャーアプリを介して多くのファンを有しています。それぞれの網紅は、ゲームやファッション系を中心に、旅行、日本をはじめとした海外情報、など多岐にわたる専門性を有しており、数十万人~数百万人のファンを有しており、中には千万人を超えている人もいます。そして、その多くが優れた容姿を持っている場合が多く、網紅になる前提として整形で容姿を整えることがある種の社会通念化しています。 確かに、自身のファンに向けた企業の商品アピールを配信するような広告収入やイベントの参加などで、一部の網紅たちは非常に高額な収入を得ていることもあり、自分も網紅になって稼ぎたい、と思う若者も少なくありません。また、中国では日本以上にマスメディアの影響力が落ちており、網紅のような影響力のある個人の方が企業や商品の宣伝において重要視されている現状も多分にあり、彼ら/彼女たちの費用や存在意義を押し上げている背景もあります。