【MLB】ナ・リーグMVP争い、50-50の大谷を追う攻守のチームリーダー、リンドーア
【MLB最新事情】 ナ・リーグのMVP争いはドジャースの大谷翔平が本命だが、メッツのフランシスコ・リンドーアが追い上げている。大谷は前人未到の50本塁打、50盗塁に近付いているが、一方で8月は打率.235、出塁率.286と調子が良いとは言えなかった。 それでもデータサイト「ファングラフス」で比較すると、今季攻撃面では大谷が圧倒的で、打撃と走塁の評価は大谷が平均より57.7ポイントも上なのに対し、リンドーアは32.6ポイント。しかし守備では遊撃手であるリンドーアの16.5ポイントに対し、守備をしない大谷は-14.8ポイント。結果ファングラフスのWAR(勝利への貢献度)ではリンドーアが7.3と大谷の6.6をリードしている(現地時間9月5日現在)。 もっともWARは、近年野球記者たちが信頼するスタッツとはいえ、あくまで判断を下す出発点であって、終着点ではない。実際、22年のナ・リーグはWARでカージナルスのノーラン・アレナドが7.2と上位だったが、MVPは6.8で3位のカージナルスのポール・ゴールドシュミットが獲得した。 短縮シーズンの20年もパドレスのフェルナンド・タティス・ジュニアが3.3で1位だが、MVPは3.0で2位のブレーブスのフレディ・フリーマンだった。数字以外で記者が特に重視するのはストーリー性。大谷が50-50に近づいていること、7億ドルの大型契約で移籍し、期待どおりの活躍でドジャースをけん引しているインパクトは大きい。 そこでメッツは、9月になってリンドーアのストーリー性を盛り上げようとしている。普段メディアに対して、必要最低限のことしか話さないデビッド・スターンズ編成本部長がMVPレースについて尋ねられ、「メッツ球団の歴史の中で、個人でおそらく最も素晴らしいシーズンを送っている」と称えた。ニューヨーク育ちのスターンズは子どものころからのメッツファンだ。 ブリュワーズのGM時代の18年にクリスチャン・イエリッチがMVPに選ばれたが、「MVP含め特別なシーズンを何度も見てきたが、リンドーアの今季はその中に含まれる」と高く評価している。9月3日は本塁打を含む2安打3打点の活躍で、チームを7対2の勝利に導き、本拠地シティ・フィールドのファンは「MVP!」の大声援を送った。 メッツはナ・リーグのワイルドカード争いで3位のブレーブスに0.5ゲーム差に迫っているが、チームをポストシーズンに導けばさらにストーリー性は上がる。加えてリンドーアはチームの全140試合にすべて出場し、30本塁打、26盗塁。メジャー歴代の遊撃手の中でアレックス・ロドリゲスの7度に次ぐ、5度目の30本塁打シーズンを達成。さらに30本塁打、30盗塁に到達すれば2年連続で、これは8人目の快挙になる。 MVPの可能性が出てきたことについてリンドーアは「もしそれが実現すれば、夢のような話。でも今は試合に勝つことに集中してるし、ファンの声援には感謝しています」と地元記者にコメントしている。 ペナントレースは残り20数試合、投票権を持つ30人の記者たちは、ドジャースとメッツ、大谷とリンドーアの成績を日々チェックしながら、どちらが価値ある選手なのか、自らの考えを巡らせることになる。 文=奥田秀樹 写真=Getty Images
週刊ベースボール