“ワケあり”専門の不動産屋に聞く、賃貸契約のウラ側。「審査に落ちる人」が利用する“アリバイ屋”とは
メンズエステ店に場所を貸した不動産屋も逮捕された
メンズエステについては、「最近増えている」程度の認識しか持っていない人も多いだろう。しかし実際には、不動産屋生命を脅かす危険性の高い犯罪なのだとA氏はいう。 「今年の夏に、メンズエステ店の経営者が逮捕される事件がありましたが、その後に、メンズエステの営業目的と知りながら、住居目的と偽って賃貸契約をしたということで不動産屋の社長が逮捕されました。実はこの流れって、特殊詐欺事件と同じなんですよ」 特殊詐欺事件がニュースになった当初は、内情が不鮮明だったために違反者を取り締まるだけだった。やがて内情が明るみになり、社会問題に発展すると、「アジトとなる場所を貸し出した不動産屋も悪いのではないか」、「もしかしたら、不動産屋も犯罪組織とグルなのではないか」という憶測が飛び交いはじめた。 「社会問題を背景とする間口の縮小化は仕方ないです。この事件以降、メンズエステ営業が目的の場合は物件の紹介を断るようしました。ただ、お客様から虚偽の申告をされても見抜くことはなかなか難しいですし、追求もしにくいので、これといった対策ができないまま間口を狭めないといけないのは、経営者としてとてもツライですね」
捜査一課からの電話に冷や汗
メンズエステ以外にも、行方不明者の情報提供依頼などで月に1度は警察から連絡が来るという。 「組織犯罪対策課と捜査二課からの連絡が多いのですが、一度、捜査一課から呼び出されたことがあります。捜査一課といえば、殺人などの強行犯捜査や誘拐などの特殊犯捜査を担当している課です。めちゃくちゃ焦りましたね」 呼び出しの理由は、A氏の不動産屋とアリバイ屋の利用者が、ある殺人事件の捜査線上に容疑者として浮上したとのことだった。 「ただし、物的証拠がないので、警察側もどうにも動けなくて、最後の頼みの綱でうちに連絡したそうです。でも、そのお客様とは賃貸契約以外の接点は全くなかったので、すぐに話は終わりました」
根本的な解決のための次の道を模索
通常の不動産業務とは別に、こういったトラブル対応にも追われる毎日。最近、感じるのは、「賃貸契約のしにくい人々を助け続けるのはいいけれど、根本的な解決にはなっていない」という歯がゆさだ。 「色々とハードルはありますが、僕自身がオーナーになって、ナイトワーカーたちに物件を貸し出せたらと考えています。あとは、マネーリテラシーの教育や資産運用の仕方も教えられたらいいですね。 というのも、ナイトワーカーたちが賃貸契約しにくいという状況はすぐには変えられないので、ちゃんとお金に関する知識を得て、申告や管理もきちんとやって、自分で自分の財産を守れるようになってほしいです。そして、職業に関係なく、誰もが安心して暮らせる部屋を手にいれられる。そんな社会になってほしいですね」 <取材・文/安倍川モチ子> 【安倍川モチ子】 東京在住のフリーライター。 お笑い、歴史、グルメ、美容・健康など、専門を作らずに興味の惹かれるまま幅広いジャンルで活動中。X(旧Twitter):@mochico_abekawa
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