〈没後22年〉政治家・石井紘基は誰に殺されたのか? 彼が知った「日本がひっくり返るくらい重大なこと」とは?
「つながればパワー」という信念
今西 『つながればパワー』。この本が出た1988年当時は、せいぜい携帯電話があったぐらいで、今みたいにSNSでつながるとかメールでつながるということができなかったわけですよね。このときつながろうと思ったら、泉さんみたいに手紙を書くか、電話するしかなかった。その頃から「つながればパワー」という先見の明がすごかったなと思うんですけど、どうですかね。 泉 先見の明もすごいけど、40過ぎの当時の人が、「つながればパワー」で政府に勝てると思うのがすごいよね。逆に私はこれに感動して、大きな組織、団体ではなくて市民を信じて、市民の力と力が重なり合えば力になって勝利できるんだと、社会は変えられるんだと。その信念を私はこのタイトルからも一貫して、石井さんに学びました。 どっちを見て政治をするか。それは国やお偉いさんではなくて、庶民の方を向いて仕事するのだと。信じるのは庶民だと。一番すごいのは、本当に感動するのは、石井さんは庶民の力を信じていたということ。 たとえば、民間の機関で国の会計をチェックする「国民会計検査院」をつくるという構想。普通思わないですよ。選挙に何の得もないですよ。「国民会計検査院で私たちの払ったお金の流れを、税金の使い道を透明化していこう」ということを、早い段階で言っておられた。 石井さんの『つながればパワー』の帯文って「私は政治をこう変えたい」、副題は「政治改革への私の直言」ですよ。政治改革が必要だということを1988年に叫んでおられて、国会議員の国政調査権を使って、お金の透明化もはかろうと動かれたわけですよ。 それはまさに、今の問題ですよ。裏金問題もそうだし、私たちのお金はどうなっているかも、当時から今に全部つながっている話で、石井さんは30数年前にそれを見通し、庶民、国民の力を信じていた。 今振り返ってみますと、私は石井さんに対して思うのは、やっぱり「自分の中に今も生きている」のはほんまにそうで、明石市長の時も、しんどい時もありましたけど、その時も石井さんの思いというものを自分も受けながら、「信じるべきは市民なんだ」と。最後は市民が立ち上がってくれて、きっと市民が一緒になってやってくれるという思いは、ずっと根っこにありました。 石井さんなくして明石市長としても頑張れなかったし、そういう意味では、私の中では石井さんは生き続けているし、私がまだ果たしていないもう一つの正義である「お金の闇」。 今回の本では、私が衆議院議員時代に見た、財務省と厚労省の抗争の歴史や、国交官僚の無駄遣い競争についても書きました。これからは、明石市長時代にはできなかった、国家の不正の研究も、しっかりやっていきたいと思っています。