『シティ・オブ・ゴッド』容赦なき地獄の暴力映画は、なぜ不朽の名作になりえたか? ※注!ネタバレ含みます
「希望」の象徴としての『シティ・オブ・ゴッド』
そして、ブスカベやリトル・ゼを演じた少年たちは、現在もブラジルで俳優として活躍している。彼らは演技によってファヴェーラから抜け出した。ある意味で、この映画そのものがファヴェーラを支配する暴力的な現実を変えられる証明にもなっているのだ。映画自体は絶望のグルーヴ感で突っ走る作品だが、その撮影の裏側には希望が満ち溢れているのである。もっとも、監督はロケをする際に地元のギャングのボスと交渉するなど、ヴァイオレンスでリアルな苦労をしていたようだが……。 『シティ・オブ・ゴッド』の魅力は何か? そう聞かれたら、たくさんの答えがある。とびきりのヴァイオレンス、圧倒的なリアリティ、勢いの良い編集、景気のいい音楽、南国の青春映画、人が死にまくるわりに『ウォーターボーイズ』的な舞台裏……。こういった様々な魅力が混ざりあって、『シティ・オブ・ゴッド』は出来ている。恐らくこれから先、こういった映画は滅多に出てこないし、その魅力が色あせることもないだろう。これは現実に存在する圧倒的な絶望の中から生まれた、現実の希望の灯でもあるのだから。 ■参考文献 ・シティ・オブ・ゴッド DTSスペシャルエディション (初回限定2枚組) ・『シティ・オブ・ゴッド』パンフレット ・キネマ旬報 2003年6月下旬号 文:加藤よしき 本業のゲームのシナリオを中心に、映画から家の掃除まで、あれこれ書くライターです。リアルサウンド映画部やシネマトゥデイなどで執筆。時おり映画のパンフレットなどでも書きます。単著『読むと元気が出るスターの名言 ハリウッドスーパースター列伝 (星海社新書)』好評発売中。 X → https://x.com/DAITOTETSUGEN (c)Photofest / Getty Images
加藤よしき