「バルクオム」の10年が変えたメンズスキンケアと野口CEOが語る未来像
メイクアップは小売店の棚を見てもらえば分かるが、あまり売れてない(笑)。需要がニッチだから、広告費を投じれば結果がついてくるという単純な話ではない。商品、売り方、コミュニケーションの工夫が必要だし、先は長い。だが男性の美容文化がこれから発展する中で必要とする人は増えていくだろう。使命感を持って、腰を据えて育てていく。
WWD:昨年11月にはインナービューティの提案として“ザ・プロテイン”を発売した。
野口:これからの「バルクオム」を象徴する商品になる。メンズビューティの分野で新しい“概念”を作り出すことにもチャレンジしたい。
プロテインは一般的に筋力増大を補助する栄養剤のイメージだが、僕らが提案するのはインナービューティーのためのサプリメント。男性の美容と、日中を健やかに過ごすために必要な栄養素として、タンパク質だけでなくさまざまなコンディショニング成分を配合した。プロテインという名称を使ったのは、体に摂取するものとして、男性にとってなじみがあり、コンセプトが伝わりやすいと考えたからだ。
これまでの商品と生まれたプロセスも違う。これまでは僕をはじめ一部の人間がコンセプト設計するものが多かったが、この“ザ・プロテイン”は社員のアイデアが元になった。会社は40人前後の少数チームだが、ボトムアップのアイデアも積極的に生かしていく。
例えば100年前には“まつ毛美容液”というものは影も形もなかった。誰かがゼロから作り出して市場に広め、「まつ毛美容」を文化として定着させた。新しい概念を作り出すために、主語となるブランドの知名度や信頼性は強みになる。「バルクオム」はそれにチャレンジできる場所にいる。まずは“ザ・プロテイン”を通じて「メンズインナービューティー」という新しい美容文化を作り出したい。
WWD:思い描く“頂上”の景色は。
野口:メンズビューティの世界ナンバーワンブランドになること。とはいえ売上高は国内が9割以上で、(グローバル戦略は)まだまだ胸をはって言える規模ではない。海外では中国が最優先。現地のメンズビューティ市場はレッドオーシャンと化しているが、クオリティーではどこにも負けていない。消費は冷え込んでおり我慢どきだが、粘り強く機をうかがっていく。