「バルクオム」の10年が変えたメンズスキンケアと野口CEOが語る未来像
WWD:洗顔、化粧水、乳液の3ステップ提案かつ、合計価格は1万円近い。一般男性にとってはハードルが高かったはずだ。
野口:新参者の僕は、メンズビューティ業界の常識を疑うことから始めた。例えば男性のペルソナは「めんどくさがり」。そのせいか男性向けスキンケアは手軽なオールインワンタイプが主流だったが、成功事例と言える商品はほとんど見当たらなかった。
僕は本当にそうなのか?と疑い、別の仮説を立てた。求められているのは、多少値段が張っても、手間がかかっても間違いない「王道のベーシック」なのではないかと。「バルクオム」の商品開発は予算に縛られることなく、女性向けの本格的なスキンケアにも負けない処方を詰め込んだ。
成分や処方を語らず
コンセプトの強さで勝負
WWD:デザインやコンセプトも趣向を凝らした?
野口:ブランド名の「バルク」は、成分や処方などにこだわった“中身”を意味する。ただ、それについてくどくど説明したくなかった。美容に興味がない僕自身、カタカナや専門用語でスゴさを語られても響かないからだ。
全てはファーストインプレッションで決まると考え、コンセプトを磨いた。コスメの世界で男性向けは「手軽でそれなり」なイメージがあり、かたや女性向けは「本格的で効果実感できる」イメージがある。世に出ている男性向けコスメは黒のパッケージばかりだったから、あえて白をキーカラーにすることで、“本物”であることを連想させると気が付いた。コストを少しでも削るためにパッケージを徹底的に簡素化したが、それは余分を削ぎ落とし、バルク(中身)への本気度を際立たせる意図もあった。
WWD:滑り出しはどうだったか。
野口:最初の2年間は全く売れなかった(笑)。ターニングポイントになったのは3年目。SNS広告にいち早く注力し、フェイスブックが大きな認知・流入のハブになった。当時、SNS上ではメンズスキンケアの競合はほぼ皆無で、自由にターゲットに訴求できる夢のような環境だった。