「“1日200キロカロリーで健康に”というデマを信じ…」 SNSにだまされ拒食症になる若者たちの自殺が豪で増加
「刃物を使った事件が次々に起きている
のべ20年ほど現地に在住、日本人留学生を対象にしたエージェント業を営む日本人男性に聞くと、 「妻との間に9歳の息子がいて現地の小学校に通っています。息子はTikTokやYouTubeに夢中で、朝食の時もスマホを見続けているほどですが、過度に女性の胸が強調されたアニメキャラなどの動画が流れてくるのが気になりますね。子供たち同士の連絡にもSNSを使っている様子ですが、最近は刃物を使った事件が次々に起きていて、SNSを介して凶器を入手しているのではないかと心配です」 今年だけでも、4月にオーストラリア最大の都市・シドニーのショッピングモールで、40歳の男が刃物で無差別に6人を殺害する事件が発生。その2日後には、シドニー近郊のキリスト教会で、15歳の少年が聖職者らを負傷させる事件が起きているのだ。
子供たちが被害者となる事件が多発
先の記者が解説する。 「これらの事件の犯行現場を捉えた動画がSNSを中心に拡散した後に、類似の事件が連鎖的に発生しているのです。同じ4月には、豪州南東部の中心都市メルボルンにあるマクドナルドで、16歳の少年が30代の客を刃物で切りつけて、重傷を負わせています」 5月にもオーストラリア西部の都市パースの郊外で、16歳の少年が見ず知らずの男性に刃物で切り付け負傷させ、警察官に射殺される事件が起きた。 しかも、未成年による凶悪事件のみならず、子供たちが被害者となる事件が多発、社会問題化していると聞くから穏やかではない。
「1日200キロカロリーで健康に暮らせる」というニセ情報をうのみに……
今回のSNS禁止法案が生まれるきっかけの一つとなったのが、昨年4月の少女自殺事件だという。 「ビクトリア州に住んでいた15歳のエヴァンスさんは、学校でイジメを受けて拒食症となり、SNSの“1日に200キロカロリーで健康に暮らせる”などといったニセ情報をうのみにして症状が悪化。将来を悲観して自ら命を絶ったのです。彼女の父親は“いくら私が本当のことを助言しても、娘はネットの話しか信じなかった”と嘆き、現在は反SNS運動の中心メンバーとなっています」(先の記者) 同様の事件は他にもあると話すのは、現地事情に詳しいジャーナリストである。 「筋骨隆々の体に憧れた14歳の少年が、筋トレ指南の動画に熱中した挙句、拒食症となり自殺する事件も起きました。SNSで評価されるたくましい体と、自分の姿のギャップに苦しみ、過度なダイエットが原因で体重が25キロ減少して入院。それを揶揄した友人たちが、SNS上で“自殺しろ”というメッセージを送っていたのです」 ただでさえ視野が狭くなりがちな子供にとって、SNSが負の側面を持っているのは疑いようのない事実だろう。 後編【「小学生ですら“人気者でないと人間の価値がない”という価値観に」 SNSにむしばまれる子供たち オーストラリアでSNS禁止法が成立へ】では、現地で暮らす日本人による貴重な証言を紹介する。 *** (相談窓口) ・日本いのちの電話連盟 電話 0570-783-556(午前10時~午後10時) https://www.inochinodenwa.org/ ・よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター) 電話 0120-279-338(24時間対応。岩手県・宮城県・福島県からは末尾が226) https://www.since2011.net/yorisoi/ ・厚生労働省「こころの健康相談統一ダイヤル」やSNS相談 電話0570-064-556(対応時間は自治体により異なる) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/soudan_info.html ・いのち支える相談窓口一覧(都道府県・政令指定都市別の相談窓口一覧) https://jscp.or.jp/soudan/index.html
「週刊新潮」2024年11月28日号 掲載
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