QRコードやオンラインで弔いも――「墓参りのデジタル化」で追悼のあり方は変わるか #老いる社会
「橋本さんの友達がここに来るついでに、私のところにも来てもらえればと期待しています。そんなときに何もないとさびしいですから」 橋本さんとリチャードさんはデジタル技術を介してつながる墓友(はかとも)といえそうだ。
お墓も位牌ももともとバーチャルなもの
QRコード、オンラインメモリアル、あるいはオフラインのデータなど、お墓参りや自宅での供養にさまざまなデジタル技術が導入されている。今後デジタル化された弔いは何か一つの方法に集約されるのだろうか。 「一つに収束はせず、デジタル祭壇や、追悼のためのオンラインプラットフォームなど、多様なスタイルが登場すると見ています」 そう語るのは、芝浦工業大学デザイン工学部助教の瓜生大輔さんだ。瓜生さんは、デジタルメディアに関する先端技術を死者供養や追悼に応用する研究に取り組んできた。作品には、世代の異なる一族の写真を鑑賞するらせん階段型のデジタル墓「MASTABA」(2006年)などがある。
「追悼・供養の際、人々は位牌、仏壇、お墓、遺骨などに手を合わせますが、そこに故人がいるわけではありません。これらは、そもそもがバーチャル(仮想的)なインターフェース(接点)です。伝統的な死者祭祀のためのプロダクトとデジタル化された写真や映像などに向き合うものと本質的な違いはないと思います。死者を偲び、弔うといった行動は、そのバーチャルな存在を大切にすることでもあります」 仏壇やお墓に代わる場合、どんなバーチャル・インターフェースなら、現代人は故人を偲び、悲しみを癒やすことができるのだろうか。瓜生さんは「何を作るのであれ、製作プロセスに関与することがポイント」だという。 「位牌を作ったり、仏壇を選んだりするとき、故人を思い出しながら納得がいくまで考えますよね。それと同じで、遺品を整理してオンラインメモリアルサイトに載せる写真を選んだり、追悼文を書いたりのプロセスに関与する。その過程で人は悲しみを受け入れたり、癒やされたりするのだと思います」