QRコードやオンラインで弔いも――「墓参りのデジタル化」で追悼のあり方は変わるか #老いる社会
有壁さんにQR墓を勧めた滝川市の山崎石材工業の代表・山崎修さんはこんな技術が欲しかったと語る。 「東日本大震災後、津波の到達点に石碑を建てる『津波記憶石プロジェクト』に参加しました。そのとき、石碑にQRコードを付けて津波の映像などの情報にアクセスできるようにした。これは便利だなと。うちで扱うお墓にも付けたいと思ったのですが、当時はサーバー維持費がネックでした」
だが、「永久QR」なら墓石のように長持ちするだけでなく、墓石以上に豊かな情報を残せる。 「地方のお墓を解体し、遺骨を都市部の納骨堂などに移す『墓じまい』が最近はやっています。しかし、お墓がなくなると、地方と都市部を行き来するつながりも消える。お墓は動かないところにメリットとデメリットがある。デメリットをデジタル技術で補完できればいいですね」
樹木葬とオンラインお墓に記帳
最近はお墓に樹木葬を選ぶ人も増えている。この場合、墓標はなしか、あったとしても名前と生没年のみの簡素な墓標だ。だからこそウェブに故人に関する豊かな情報を、という発想も生まれる。 福岡県太宰府市の「令和の里」記念樹公苑は、樹木葬の霊園だが、「オンラインお墓」も運営されている。同公苑は小高い丘にあり、墓標を設置した自然公園は「祈り」の場として、位牌を管理する本堂は「法要」をする場として位置づける。オンラインお墓は標準料金の範囲(追加料金なし)で利用可能だ。
「墓標を見るだけでは故人の人となりはわかりません。死去後何年か経ってお孫さんらがおじいちゃん、おばあちゃんはこんな人だったと想像できるように『貴方を偲び、貴方を忘れない』という思いからオンラインお墓を設置しました」(令和の里・福本静二さん) 「保育士(になる)夢かなえたね!!」「ずっと、一緒にいてくれてありがとう」 そんな家族からのメッセージが寄せられているのは、2021年2月に39歳で亡くなった重山美千代さんだ。美千代さんはコロナ禍のさなかに亡くなったため、葬儀に参列できない遠方の親戚もいた。そこで遺族は、遠方からでも美千代さんに思いを寄せられるよう、美千代さんのオンラインお墓の利用を決めたのだという。 いつでもどこでも、文章や写真で故人の思い出に触れ、偲ぶことができる。そこがオンライン墓の長所だが、あえてインターネットにはつながずデジタルデータを利用する墓苑もある。