山田尚子「SNSが世の中を喰っている」 『きみの色』で“若者の社会性”を描いたきっかけとは
物語をアニメで描くことの意味
ーー様々な創意工夫が感じられるアニメーションでした。山田監督にとって、物語をアニメで描くことの意味や力についてはどのように考えていますか? 山田:話を簡単にしたいわけではないのですが、“観やすい”と思います。情報としてデザインしているものなので、よりビビットに映るのではないかと思います。 ーー私も本作を観て、『きみの色』で描かれていた感情を高校生の時に抱いていたことを思い出したんです。その時の自分が観ていたら、自分を肯定されているように感じただろうなと思いました。 山田:ありがとうございます。何かのメッセージ性を「世に問うぞ」という作品ももちろんいいと思っているのですが、本作は「なんかこういうのもいいよね」という、ひとつの素敵な世界を見せられている感じがあるんです。最初はもっと大スペクタクルなものじゃないといけないかと思っていたのですが、いやいや、逆にこういう作品があっても許される世の中であってほしいと思い直しました。こうした映画がしっかりと存在していけることがとても大事だと思い、心を強く持って作りました。
間瀬佑一