精神疾患は予防と早期治療が大切な理由をご存じですか? 心の不調のサインも解説
精神疾患を予防するにはどうすればいいかを精神科医が解説 一次予防とは? 精神疾患の多くはストレスが原因?
編集部: 精神疾患を予防するにはどうしたら良いのですか? 森田先生: たとえば職場におけるメンタルヘルス対策では、予防法として「一次予防」「二次予防」「三次予防」が設定されています。一次予防の目的は、病気の発症を未然に防ぐということ。 ここで大事なのはストレス対策で、ストレスにうまく対処するとともに、ストレスをできるだけ減らす生活を心がけることが重要です。 編集部: ストレス対策とは、具体的にどのようにすれば良いのですか? 森田先生: たとえば会社に所属している場合には、職場全体におけるストレスコントロールが重要です。仕事の量や質、人間関係などを見直し、ストレスの基になりそうな要素を排除する適切な配慮などに取り組むことが大切になります。 編集部: 最近では、社員に対してストレスチェックも行われていますね。 森田先生: はい。職場全体でストレスコントロールを行うのと同時に取り組む必要があるのが、社員一人ひとりに対するストレスチェックです。これはチェックテストを行うことで一人ひとりのストレスの度合いを計るもの。 会社全体でストレスコントロールを行う必要性があるかどうか実情を把握するうえで重要ですし、また、ストレスチェックの点数が高い(=ストレスの度合いが高いと思われる)人には産業医面談を勧めるなど、本人への気づきを促す役割も果たしています。 編集部: 会社全体のストレスコントロールと、社員一人ひとりのストレスチェックが必要なのですね。 森田先生: はい。そのほかにも、自分では気づかなくとも心の調子を崩しかけているということもあります。 そのため周囲が互いに目を配り、「怒りっぽい」「常にイライラしている」「すぐに涙を見せる」など、「ちょっと具合が悪そうだな」と思われる人をいち早く探して、産業医やカウンセラーなどの相談窓口につなぐ配慮も大切です。 編集部: そのほか、一人ひとりができることはありますか? 森田先生: ストレスチェックを活用するなどして、自分のストレス状態にいち早く気付くことと同時に、生活習慣の見直しも重要です。睡眠が取れているか、栄養はちゃんと取れているかなどを改めて確認してみましょう。 編集部: 一次予防で食い止められれば、その後、病気を発症せずに済むのですか? 森田先生: 発症する確率を下げることができます。二次予防では疾病の早期発見と治療や対応、三次予防では社会復帰のためにリハビリテーションやリカバリーを行います。 つまり、二次予防ではすでに精神的不調のある人が対象になり、三次予防では精神疾患を抱えた人が対象になるということです。そのため一次予防でくいとめることができれば、病気が発症する確率を下げることができるのです。 編集部: なるほど、一次予防がとても大事なのですね。 森田先生: はい。一次予防がきちんとできている家庭や職場なら、たとえ精神疾患を発症したとしてもその後の再発を予防したり、社会復帰がスムーズになったりすることがわかっています。