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<ラグビー>歴史的1勝へ 日本代表、ウェールズに挑む

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THE PAGE

 18―22。2試合あるうちの1戦目は4点差で敗れた。  6月8日、大阪の近鉄花園ラグビー場で行われたウェールズ戦である。日本は、2万人超の観客を大いに沸かせた。春に欧州6カ国対抗の王者となった相手に対し、低いタックルを繰り出したのだ。ボール保持者とタックラーがぶつかった接点を援護する「2人目の寄り」も低くて速かった。お家芸たる連続攻撃も冴えた。   今回来日したウェールズは、4年に1度結成されるイングランド、アイルランド、スコットランドとの連合軍「ブリティッシュ&アイリッシュライオンズ」に、主力の15名が取られていた。キャリアの少ない若手が主体。いわば控え組だった。さらに、その日は最高気温29度で、母国にはない蒸し暑さに難儀していた。接戦ができた背景を「ウェールズが思ったほどガツガツ来なかったから」と分析するジャパンの選手もいた。  もっともタックルと「2人目の寄り」は、もともと日本の課題だった。  5月25日開幕のパシフィック・ネーションズカップ(PNC)では、トンガ、フィジーに連敗。高い身体能力を活かす両国に対し、ジャパンは、局面が重なるほど接点への「2人目の寄り」が遅れた。相手にボールを繋がれれば、あるいは自分たちのボールを取られれば、腰高のタックルで突破を許した。  2敗したことで、その課題を深い部分で認識。そうしてウェールズ戦に臨んだのである。だから、相手が控え組だったとはいえ、日本は進化を示したとも言える。  もちろん、15日にある2戦目も勝ちに行く。  1戦目で掴みそこねた得点チャンスをモノにすべく、バックスの攻撃ラインの並びを少し変えているようだ。身体を張るフォワード陣は、接点へ低く入る意識を再徹底している。  帰京後のトレーニングを概ね非公開としたエディー・ジョーンズ、ヘッドコーチは、展望をこう語る。  「セットプレー(スクラムやラインアウトなど攻守の起点)をきっちりとし、コンタクトエリアを整備して、自分たちのプレーをやっていきたいです。ボールがあれば、向こうのディフェンスにトラブルを与えられる」  間違いなくウェールズは、初戦の時よりもコンディションを上げてくるであろう。その欧州王者に、どう対抗するか。  その問いに、突破役であるセンターのマレ・サウは「速いテンポのラグビーをやる。強さは向こうの方がある。ただ、体力とスキルはこっちの方がいい」と話す。  サウが目指す素早い攻撃を引き出すには、接点で球を確保、あるいは奪う必要がある。そんななか、南半球最高峰リーグであるスーパー15のレベルズでプレーするフッカー堀江翔太は、6月上旬に来日するや「もっと2人目に入れ」と言い続けている。  「トップリーグのボール回しの展開が速いせいで、すぐ次、次に行こうとしている。でも、ラック(ボール保持者が倒されてできる接点)をすぐに捨てる癖が、向こうのテンポを生んでしまうんでね」  日本のトップリーグでは、守備側がボールを奪えそうにない接点にあまり人数をかけない傾向がある。「捨てる」と呼ばれるそうした癖は、国際舞台では苦戦の要因となる。国内と段違いのつば競り合いに触れた経験から、堀江はそう考えるのだ。だから、マレが聞いたのと同じ質問にはこう答えるのである。  「(ウェールズは)体重差を活かしてどんどんのしかかってくる。それに負けないように、タフに、激しく行こう、と。(接点に)2人目が働きかけることで、そこへ向こうが3、4枚と人数をかけてくれて…」  そうすれば、グラウンドの外側にスペースが開き、初めてサウが思い通りに攻められる、というわけだ。そこへフォワード最年長のロック大野均は、「1人目がしっかり下に刺さって、2人目が押し返す」と言葉を足す。「1人目」とはタックルのことだ。  素早く粘り強い「2人目」の寄りと、低いタックルの連続。1戦目より得がたいだろう2戦目の白星を奪うには、日本はこの2つをやり抜きたいところだ。  接点云々の話と無関係にキーマンとなるのは、何といっても田中史朗だろう。身長166センチと小柄ながら、堀江より少し早くハイランダーズと契約。日本人初のスーパー15プレーヤーとなったスクラムハーフである。  「勝てたな」   花園の試合映像を見返しては、こう悔やんでいた。  おそらく、この数日で、環境にも慣れたウェールズは着実な準備を施している。初戦よりもハードにぶつかるだろう。練習では高い姿勢のランナーを抱え上げてボールを奪う動きを確認していたようだ。それは、日本がPNCでやられて苦しんだプレーである。  「初戦が金星を挙げる唯一のチャンスだった」。実は、周囲ではそんな見方も少なくないなか、田中はこんな覚悟を口にするのだ。  「相手が強くても弱くても勝たなきゃいけない。そこは日本代表の責任です」  15日、東京は秩父宮ラグビー場。相手は控えと言えども、誇り高きウェールズだ。歴史的1勝は生まれるか。 (文責・向風見也/スポーツライター) (むかい・ふみや) 1982年富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、おもにラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会も行う。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。

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