マジトラのゆくえ【キリスト教で読み解く次期トランプ政権】前編
大統領選挙におけるカトリック票の存在感
2024年の大統領選挙で共和党が勝利した。トランプ、ヴァンス陣営が七つの激戦州を制し、一般投票でも過半数の7478万票を獲得するに至った原因について、現在様々なメディア、評者、シンクタンクが分析している。 インフレなどの経済的要因、戦争終結への願い、不法移民問題、熱狂的なトランプ支持者など、すでに挙げられている種々の原因はすべて影響していただろう。同時に、どの集団が民主党から共和党に流れたのかという分析の中で目立っていたのは、ヒスパニックと呼ばれるスペイン語を話すラテン系の人たちであり、別の観点からすればカトリックの信仰を持つクリスチャンだった。 英国から移住してきたプロテスタント、特にピューリタンと呼ばれるカルヴァン主義者たちが自分たちの理想郷を目指して建国したアメリカ合衆国では、プロテスタントの政治的な影響力が一貫して大きかった。アイルランド系やイタリア系、そして近年はヒスパニック系も加わったアメリカのカトリック人口は、プロテスタント国アメリカの中ではマイノリティで、20世紀になるまでは差別の対象だった経緯もある。 しかし、メインラインと言われる建国以来の教派のプロテスタントの信者が減少し、特定の宗派に属さないスピリチュアルや無神論者も増加する中で、全人口の二割を保ち続けているカトリックは存在感を増しつつある。こうした変化の一端が今回の選挙では顕在化したように見えるが、このことは一体何を意味するのだろうか?
カトリックは福音派と同様MAGAになるのか?
元々カトリック信者は浮動票で、個々の選挙での票は両政党に二分されるのが通例だった。カトリック人口の人種的構成員は白人とラテン系だが、白人の6割が共和党を支持し、反対にラテン系の多くが民主党を支持することで均衡が保たれていたのである。 それが今回、白人カトリックに加え、ラテン系カトリック、特に男性がハリスではなくトランプに投票したことで、全体でも6割のカトリック教徒の票を共和党が獲得することになった。 ミシガン、ペンシルバニア、ウィスコンシンといった激戦州にはカトリック信者が多く、その影響は小さくなかった。アメリカの複数のメディアがこの問題を取り上げているが、原因は、争点の一つとされていた中絶禁止問題ではなく、経済的問題だと推測されているが結論はまだ出ていない。 いずれにしても、2016年、2020年と同様今回も、その8割がトランプに投票した福音派(プロテスタントのキリスト教右派)のように、カトリックがMAGA※1の支持層として定着するのか注目を集めている。 ※1 MAGA:Make America Great Again「アメリカ合衆国を再び偉大な国にする」という選挙のスローガン。トランプが使用し、トランプ陣営の代名詞となっている。