マジトラのゆくえ【キリスト教で読み解く次期トランプ政権】前編
カトリックに回帰した閣僚たち
こうしたカトリック票の増加と連動するかのように、第二次トランプ政権の要職にはカトリック教徒が目立つ。 そもそもカトリックということで言えば、現大統領のジョー・バイデンは、ケネディ以来の史上二人目のカトリック教徒だった。バイデンの閣僚は7人カトリック教徒で、これは例外的に多いのだが、副大統領のハリスはリベラルなバプテストで国務長官のブリンケンはユダヤ人である。 対するトランプ内閣では、第一次では、副大統領も国務長官も福音派キリスト教徒だった※2。それが第二次で副大統領のJ・D・ヴァンス、国務長官マルコ・ルビオと、共にカトリック教徒になった点は注目に値する。現在発表されているだけでも、内閣に準じる立場の国連大使やCIAの長官などの要職にカトリック教徒がいる。 バイデン政権、トランプ政権でこれだけカトリックが影響力を持っていること自体、そもそもカトリックが政治的に左から右まで相当幅があることを示すと同時に、数的にこれだけ要職に入っていることには端的に時代の変化を感じる。 特に今回の第二次のトランプ内閣に入った二人、ヴァンスとルビオは、福音派キリスト教を経由しつつ、カトリックに回帰した人物で、自身の政治思想をカトリック信仰に意識的に結びつけている点が特徴的だ。 ※2 トランプの前政権の側近の中でもよく名前の知られたカトリック信者としては、米連邦議会襲撃事件に関する議会証言を拒んだため議会侮辱罪で有罪判決を受けていたスティーブ・バノンがいる。彼はカトリックの中でも明確に極右の立場を取り、しばしばフランシスコ教皇を批判している。
次期国務長官マルコ・ルビオ
キューバ移民であるマルコ・ルビオは、カストロが政権をとる2年前にアメリカに移住したカトリックの家庭出身である。バーテンダーやウェイトレスで生計を立てる両親のもとで育ち、奨学金で大学に通い、法務博士の学位を獲得した後、共和党の上院議員になった。 家族がモルモン教徒になりかけた時や、妻子がペンテコステ系(霊による癒しや霊感を特徴とする教派)の福音派教会に通い始めた時に、ルビオは熱心に家族を説得してカトリックの信仰に回帰させたと言う。カトリックの神学や教義こそが自分の思想だとするルビオは、中絶やLGBTQに関して否定的な保守的立場に持ち、中国のウイグル人弾圧への批判も含め、全ての人が権力の抑圧なく信仰を持つ「信教の自由」に並々ならぬ熱意を持っている。