【ラグビー】「近道や魔法はない」元オールブラックスと歩む日本代表FW陣 9・7PNC米国戦
<ラグビーテストマッチ・アサヒスーパードライ パシフィック・ネーションズカップ(PNC):日本-米国>◇7日◇1次リーグB組◇最終戦◇埼玉・熊谷ラグビー場 ラグビー日本代表(世界ランク14位)の新体制を支える、元オールブラックス(ニュージーランド代表)がいる。 アシスタントコーチのオーウェン・フランクス氏は36歳。ラグビー王国で代表108キャップを誇った世界的プロップは、5月まで現役選手としてプレーしていた。米国(同19位)戦を控えた前日6日の最終調整後、記者会見で「世界で一番のスクラムを組めるようにしていきたい。ただ、近道や魔法はない」と中長期的な視点の目標を掲げた。 代表コーチへの道は、巡り合わせだった。現役最終盤、自身の代理人に引退後の相談し「コーチングに興味がある」と伝えていた。日本は23年W杯フランス大会を終え、24年1月にエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチが就任。オファーを受け「私はフロントローといい関係性を築くために、例えばジムで一緒にワークできればと考えていた。エディーと話をし(日本に)付加価値を与えられると思った」と新天地を決めた。 6月のイングランド戦に始まり、ここまで新体制で代表6試合を戦ってきた。フランクス氏は就任前の日本の印象を「低く組めることはアドバンテージ。ハードワーク、ディシプリン(規律)は日本人の性格上、自然とできる」と明かした上で「スクラムは経験値が必要。クリアなプロセスを続けること。相撲の稽古に似ている。ルーティンを規律高く取り組むことが必要になる」と言葉を紡いだ。 米国戦のフロントロー(FW第1列)は、先発、控えの6人で計75キャップ。そのうち45キャップを先発フッカー坂手淳史(31=埼玉パナソニックワイルドナイツ)が持ち、残り5人はW杯に立ったことがない。 控えから出番を見据えるプロップ竹内柊平(26=浦安D-Rocks)は、組む瞬間のヒットで勝った後に脚が伸びきり、スクラムで落ちる場面が多かった。フランクス氏らの助言を受け「落ちるとレフェリー判断で、不利に吹かれることもある。(課題は)マインドセット。イングランド戦でも『7割の力で、低く』と言われ『本当に大丈夫?』と思いながら組んだら、まとまって8人で押せた」。一方テストマッチを重ねてきて「真っ向勝負で来る相手は得意だけれど、アングル(角度をつける形)気味へ対応しきれないこともある」と難しさも感じる。 米国もフィジカル自慢。坂手は「セットプレーの安定。スクラム、ラインアウトからの攻撃が(チームとして)大事なので、いい球を出し続けたい」と誓う。 元オールブラックスと目指す世界一のスクラムへ、格下相手の80分も、無駄にはできない。【松本航】