映画監督・白石和彌が語る「時代劇の可能性」 「海外の人たちって日本の時代劇が大好きなんです」
今、日本で熱いエンターテインメント映画を撮れる監督といえば白石和彌だ。初めて時代劇に挑戦して話題を呼んだ映画「碁盤斬り」(2024年)やNetflixシリーズ「極悪女王」(24年)に続いて完成させた映画「十一人の賊軍」が11月1日に公開される。本作は戊辰戦争を背景にし、罪人たちが藩の命運を握る砦を守るために戦うアクション集団抗争時代劇だ。名脚本家、笠原和夫が遺したプロットを基に、アクションに次ぐアクションのエンターテインメント大作でありながら、そこには戦争に巻き込まれていく人間の悲しさも描き込まれている。どんな想いで、笠原が残した物語を映画化したのか。そして、時代劇の可能性について白石監督に話を訊いた。 【画像】映画監督・白石和彌が語る「時代劇の可能性」 「海外の人たちって日本の時代劇が大好きなんです」
「十一人の賊軍」への想い
――「十一人の賊軍」は東映が1960年代に始めた集団抗争時代劇へのオマージュを感じて、時代劇好きにはたまらない作品です。脚本家の笠原和夫さんが原案でクレジットされていますが、どういう経緯でこの作品が生まれたのでしょうか。
白石和彌(以下、白石):1964年に東映が集団抗争劇を撮っていた時代に笠原さんが脚本を書いたんです。それを京都の撮影所で東映の幹部が集まって読んだんですけど、撮影所の所長だった岡田茂さんが、ラストで11人全員が死ぬことに不満で「そんな辛気臭い話はやらせない!」って言って企画がボツになったんです。それで笠原さんはブチ切れて脚本を破り捨てた。でも、プロットは残っていて、それを基に脚本を新たに書きました。
――その際に新たに脚色したことはありますか?
白石:岡田さんが言うのももっともで、全員死んで暗たんたる気持ちで終わるのはヌケがないなと思ったんですよ。そこで最後に生き残る人物を作ったのと、政(山田孝之)というキャラクターを笠原さんのプロットよりも立てました。本当は真っすぐな男なんだけど、賊軍に入れられることで、自分だけ助かろうとしたり、いろんな動きをする。元のプロットでは鷲尾兵士郎(仲野太賀)が主人公っぽい感じだったんです。