パンダジャーナリスト中川美帆さんに聞くパンダの疑問
ジャイアントパンダはなぜ「親離れ」をするの?
東京・上野動物園で2021年6月23日に生まれた双子のジャイアントパンダ、シャオシャオ(暁暁)とレイレイ(蕾蕾)は今後、親離れの時期を迎えます。親離れすれば、母親のシンシン(真真)と別々のエリアで暮らすので、シンシンに授乳してもらったり、じゃれついたりすることはできなくなります。 親離れするのは、パンダは群れをつくらず、単独で生きる動物だから。単独で生きる動物の母親は突然、子どもに攻撃的になり、自分の縄張りから追い出すことがあります。野生下では、子どもは逃げるように母親のもとを去りますが、飼育下の狭いエリアではそれができず、子どもに危険が及ぶかもしれません。そこで、母子が離れて過ごす時間を段階的に増やしながら、計画的に親離れさせるのです。また、母親は育児中だと繁殖できません。パンダの繁殖期は一般的に年1回、2~5月頃なので、その前に親離れさせて、繁殖できるようにするケースもあります。親離れしても、双子なら体格が似ているため、双子同士はしばらく一緒に暮らすことが多いです。成長して縄張り意識が芽生え、相手を危険な目にあわせる恐れが出てくれば、別々に暮らすでしょう。ちなみにパンダの父親は子育てしないので、上野の双子も父親のリーリー(力力)とは一緒に暮らしたことがありません。 パンダが親離れする時期はさまざま。野生のパンダが親離れする時期は「2歳頃まで」など諸説あります。このところ日本で生まれたパンダたちは、1歳半前後で親離れしています。上野の双子は2022年12月23日で1歳半になりますが、姉のシャンシャン(香香)は2018年11月13日から練習して、同年12月10日に1歳5カ月でひとり立ちしました。和歌山・アドベンチャーワールドで生まれた楓浜(ふうひん)も練習を経て、2022年4月12日に1歳4カ月でひとり立ちしています。 一方、欧米で生まれた子どもは、2歳過ぎまで母親と一緒に過ごすことも多いです。きょうだいで大きく異なることもあります。台湾の台北市立動物園では、姉の円仔(ユエンザイ)は約1歳5カ月で親離れしましたが、妹の円宝(ユエンバオ)の場合はパンダ舎の生活エリアが足りず改修したので、2歳5カ月の2022年12月5日から親離れの練習を始めました。動物園は、母親の性格、子どもの発育状況、母子の関わり方、パンダ舎の広さなど、さまざまなことを考えて、親離れの時期を決めているので、こうした違いが出てくるのです。子どものパンダは、親離れしてすぐの頃は、母親を探したり、寂しがったりするかもしれません。でも親離れは、成⻑の大切なステップ。あたたかく見守りたいですね。