パンダジャーナリスト中川美帆さんに聞くパンダの疑問
23カ国/地域40カ所のパンダ施設を訪問したパンダジャーナリスト中川美帆さんに、パンダに関する疑問に答えていただきました。(2022年10月27日公開「~上野に来て50年~パンダ特集 - Yahoo!ニュース」内コンテンツの再掲) ◇ ◇
なぜシャンシャンは中国に返還されるの?
東京・上野動物園で生まれた5歳の雌のジャイアントパンダのシャンシャン(香香)が2023年2月中旬~3月上旬に中国・四川省へ旅立つ予定になりました。中国国外にいるパンダが中国へ行く理由は、主に2つあります。(1)繁殖のため、(2)高齢になり、医療設備などが整った施設で過ごすため。シャンシャンの中国行きは(1)が理由です。パンダの数は現在、野生下と飼育下の合計で2500頭以上と見られますが、まだ絶滅の危険があります。近親交配を避けて、遺伝子の多様性を確保しながら相性の良い相手と繁殖するには、多くのパンダがいる中国が適しているというわけです。 パンダの保護研究のために中国が国外へパンダを貸し出すようになって以降、スペイン、オーストリア、アメリカ、マレーシアなどで生まれたパンダが中国へ行きました。和歌山・アドベンチャーワールドからは、同園で生まれた11頭のパンダが中国へ渡っています。一方、中国で生まれ、2000年7月から神戸市立王子動物園で暮らしている27歳の雌のタンタン(旦旦)は、(2)の理由で中国へ帰ることになっています。ただ、タンタンは心臓の病気で公開をお休み中。渡航は心身に影響しかねないので、現時点の期限である2022年12月末までに中国へ行かない可能性もあります。 ◆12月26日追記 シャンシャンの出発日は2023年2月21日に決まりました。上野動物園によると、四川省のどの施設へ行くかは、2022年12月24日時点で中国側から連絡がないそうですが、いずれにせよ航空機の行き先は四川省の成都です。シャンシャンは事前にケージに入る練習を重ね、ケージに入って上野動物園を出発します。ケージのサイズは、高さ1366mm(キャスター込み)、幅1106mm、長さ1680mmで、重さは約365kg。今回の渡航のために、シャンシャンの大きさやこれまでのパンダの輸送状況などを踏まえて作られました。 シャンシャンは、成田空港から順豊(じゅんほう)航空のチャーター便に乗ります。チャーター便は、上野動物園と神戸市立王子動物園のパンダ輸送で豊富な実績のある阪急阪神エクスプレスがアレンジしました。順豊航空は中国の貨物航空会社。「貨物」といっても心配いりません。温度管理などは適切に行われます。日本よりも中国までの距離が長いアメリカのワシントンD.C.やアトランタで生まれたパンダも、アメリカの物流会社フェデックスの航空機で中国へ渡りました。また、シャンシャンの中国行きについては「輸送時間をなるべく短くするように調整中です」(上野動物園の大橋直哉教育普及課長)とのことです。 一方、アドベンチャーワールドからも3頭のパンダが2023年2月に中国へ行くことになりました。3頭は、30歳の雄の永明(えいめい)と、永明の娘で8歳の双子の桜浜(おうひん)、桃浜(とうひん)。行き先は成都にある「成都ジャイアントパンダ繁育研究基地」です。