AIへの期待は高過ぎるのか、マイクロン株急落でリスク浮き彫り
(ブルームバーグ): 半導体メモリーメーカー、米マイクロン・テクノロジーの株価が決算発表後に急落したことで、世界の投資家は人工知能(AI)チップメーカーへの投資に内在するリスクを改めて思い知らされた。
AIチップメーカー大手のエヌビディアの時価総額が約5000億ドル(約80兆円)近く落ち込んでから数日後の26日にマイクロンが示した売上高予想は市場予想の上限には届かず、同社の株価は時間外取引で約8%下落した。マイクロンのニュースは、AIサプライチェーンの一翼を担う韓国半導体メモリーメーカーのサムスン電子とSKハイニックスの株価下落も誘発し、AI関連銘柄の極端な不安定さを浮き彫りにした。
マイクロンはAI関連株ブームから追い風を受けている多くの企業の1社。同社の高帯域幅メモリー(HBM)は、大規模言語モデルを訓練するためにエヌビディア製チップと共に使用される候補となる商品だ。マイクロン株は26日の決算発表前時点で1年間の上昇率が2倍強に達していただけに、売上高見通しがアナリスト予想平均とほぼ同水準だったものの、一部の高い期待を上回らなかったため売られた。
シンガポールのオルタス・アドバイザーズで日本株戦略責任者を務めるアンドルー・ジャクソン氏は、「市場は全く非現実的な期待を抱いている。市場予想を大幅に上回る業績を発表した企業の多くがまだ売られている」と指摘。「しかし、これらの米企業の株価がかなり行き過ぎているという事実を市場はよく承知していると思う」と付け加えた。
今週初めにエヌビディア株が調整局面に入ったことで世界的なAIブームの勢いに歯止めがかかった。半導体株を追跡する世界的な指数は、今月に記録した史上最高値から約5%下落している。
カウンターポイント・リサーチのディレクター、トム・カン氏はマイクロンの決算説明について、HBMの生産能力が25年まで受注でほぼ埋まったことを明らかにしたSKハイニックスの先日の発表には及ばなかったと指摘。マイクロンにはSKハイニックスが享受しているAIメモリーにおける支配的地位や、サムスン電子が持つ広範なメモリー産業における圧倒的地位がないとも述べ、「バブリーなAIセクターの現実を直視させるものだ」と付け加えた。