20億円赤字のサガン鳥栖は存続可能なのか?
対照的にチーム人件費を、半分以下の11億6900万円へと大きく圧縮させ、最終的に1200万円の黒字となる予算を組んだ。削減されたのは昨年8月で突然引退したトーレスの年俸だけではない。Cygamesの撤退が報じられ始めていた2018年秋の段階で、竹原社長は育成型クラブへの転換を短期的な目標に掲げ、自身が社長に就任した2011年5月から強化を進めてきた、サガン鳥栖U-18を中心とする育成年代へさらに注力していくと明言していた。 「売り上げを伸ばしながら、育成型に移行するフェーズに入れなかったことは反省しています。佐賀を全国に発信する、いわゆるグローバル化へのトライを上手く達成することができなかった。いまは育成型クラブという新たな価値を創造していきながら、若手選手を数多く育てていくというキーワードのもとで、サガン鳥栖のスポンサーになりたいという企業を探していきたい」 実際、2月22日の明治安田生命J1リーグ開幕節では、長くサガン鳥栖U-18を指導してきた実績をもつ金明輝監督が、今シーズンからトップチームへと昇格した本田風智、昨夏にひと足早くプロになった松岡大起の18歳コンビを先発で起用。敵地で川崎フロンターレと引き分けている。 先駆けることオフには、2人の引退選手、期限付き移籍先で完全移籍へと切り替えられた3人を含めて16人もの選手がサガンを去った。本田の他にも2人がサガン鳥栖U-18から昇格するなど、育成型クラブへの歩みが鮮明に打ち出された直後に、新型コロナウイルス禍の直撃を受けた。 2月下旬からすべての公式戦が中断されている非常事態下で、Jリーグ側はこの先に再開させるとしても、最後の手段として位置づけてきた無観客試合の開催も視野に入れている。予算で計上されている入場料収入7億9000万円の大半がなくなる事態が生じる可能性がある。 感染拡大の一途をたどる新型コロナウイルスの影響で、新規のスポンサーとの契約がまだ完了していない。公式戦が中断され、ロゴなどの露出がなくなったとして、地場の既存スポンサーから契約を一時的に解除したいという申し出を受けるなど、予算を作成したときとは状況が大きく変わっている。