20億円赤字のサガン鳥栖は存続可能なのか?
一方で支出合計の大部分を占めるチーム人件費は、25億7036万円から24億2707万5000円と微減で推移し、売上高合計のほとんどを相殺してしまったことが赤字額を一気に増幅させた。昨シーズンの開幕時点ですべてのJリーガーのなかで2位となる、8億円もの年俸が生じていたトーレスの存在だけがチーム人件費を高騰させた理由ではなかったと竹原社長は舞台裏を説明する。 「ビッグスポンサーと出会い、一度優勝してみよう、というフェーズに乗ったなかでチーム人件費をどんどん上げていきました。複数年契約を結び、あるいは期限付き移籍ではなく完全移籍で選手を獲得した際に発生した移籍金などの償却に、2018年度と2019年度が費やされました。その間にスポンサーが撤退した状況に、チーム人件費が追いつかなかったのがこの2年間でした」 2012年度から導入されているクラブライセンス制度下で、Jリーグは財務状況などを厳格に審査している。3期連続で単年度の赤字を計上したクラブだけでなく、ある年度の決算で債務超過状態に陥ったクラブはクラブライセンスが剥奪され、Jリーグからの退会を含めた処分の対象となる。 20億円以上の単年度赤字を計上したサガンだが、既存のスポンサーや株主を中心に大規模な増資を行った結果、純資産は2151万1000円を計上した。増資の詳細を明かさなかった竹原社長は、メディア対応の冒頭で「ファンやサポーターのみなさまに、債務超過状態は回避している、と報告することが(定時株主総会の)一番のポイントだと思っています」と発言している。 「債務超過を回避することを、最低限のルールとして経営しています。J1はかなり難しいフェーズで戦わせていただいていますが、1年1年、J1へ残ることで勝負しています」 今年度のサガンには債務超過に陥らないことはもちろん、3期連続赤字を計上しない経営が求められる。今年度予算の売上高合計は前年度からほぼ横ばいの26億8900万円を計上し、二本柱の内訳は入場料収入が7億9000万円、J2時代の2008シーズンから胸スポンサーを務めてきたDHCが撤退した広告料収入は、それでも前年度から増えた9億5500万円となっている。