なぜ早大ラグビーは明大にリベンジを果たし11年ぶり16度目の大学日本一を手にすることができたのか?
タックルも早大の伝統である。 出足鋭く前に出て相手を倒す。早大のこうした攻めのタックルに対し、明大は後手に回る。 「前に出ずに受けてタックルしたため相手の突進に少しずつ食い込まれた」とは、試合後の明大、武井主将の回顧。 前半、明大が簡単にラインブレークされ、1PGと立て続けに4トライ(すべてゴール成功)を許したが、32分、早大は、PKのチャンスにPGを狙わずにタッチに出してラインアウトからの勝負を選択した。ラインアウトからモールを押し込んで森島大智がトライ。明大自慢のFW陣にダメージを与えた。 「早稲田さんはアタック、ディフェンスとも素晴らしく強かった。それにしても前半点を取られすぎた」とは、明大の田中澄憲監督。 それでも、後半、明大は小細工をせず、個々の走力を生かした攻撃で反撃、28-38に迫った。だが33分。早大はスクラムからナンバーエイトの丸尾祟真が、意表をついてサイドに持ち出して明大のディフェンスを突破。ウイングの桑山淳生がフォローして、明大を突き放すダメ押しのトライを決めた。 1発でトライに結び付ける早大のライン攻撃は見事だった。 1年生からコンビを組んでいる齋藤ー岸岡智樹のハーフ団の力が大きい。オープンパスからときに意表をつくブラインドへのパスとSH齋藤の状況判断が抜群のうえ、SO岸岡のパスの角度がいい。 SOは横に流れてパスをしがちだが、岸岡は、あのオールブラックスの名SOダン・カーター(現神戸製鋼)を参考に、縦に走りながらのパスを取り入れている。これにより後続のバックスも縦に縦にと走り込めるようになり、相手からすると真正面に向かってくるようで、横流れの選手よりタックルしづらくなる。前半25分、センター長田智希がラインを簡単に突破して、走り抜いたようにスピードに乗った縦攻撃が威力を発揮したが、その起点には岸岡のパスがあったのだ。 岸岡も「カーターのパスと間合いは色々研究しています」と言う。 この齋藤ー岸岡のハーフ団は将来の日本代表候補だろう。 「選手が本当によくやってくれた。昨年まで5年間決勝にも行けず、今年は決勝に進めただけでもよしとする面はあったが、優勝できたのだからうれしい」と、相良監督は涙ぐみ、謙虚に喜びをあらわした。