認知症の将来推計が大幅低下? 健康意識の高まりと生活習慣病コントロールに活路あり
認知症有病率は低下傾向
では、結果を見ていこう。 4地域の65歳以上人口7143人のうち、6675人(調査率93.4%)を調査した結果、2022~2023年における認知症の有病率は12.3%、MCIは15.5%だった。なお、2012年の調査報告では、認知症が15.0%で、MCIは13.0%だった。 注:「有病率」とは、ある時・ある対象集団において、疾病を有している人の割合のこと。 「2022~23年の認知症の有病率は、2012年の厚生労働省より報告された認知症有病率と比べて、低下傾向を認めました」(九州大学・二宮先生) では、『将来の認知症患者の推計』はどうかというと、「わが国の認知症患者数、およびMCI者数は、2050年でそれぞれ586.6万人(認知症)、631.2万人(MCI)と推計されました。これらの推計値は、2012年時点の認知症の有病率を用いた推計値の約30~50%少ないものです」 なんと30~50%も少ないとは、凄い変化ではなかろうか。 ここからなにが読み取れるのだろうか。 「2022~2023年の調査におけるMCIまたは認知症の有病率は、『MCI15.5%+認知症12.3%』で計27.8%。2012年の厚生労働省による報告の28.0%=『MCI13.0%+認知症15.0%』と比べて大きな変化を認めませんでした。このことから、MCIから認知症へ進展した者の割合が低下した可能性が考えられます」 なるほど。MCIから認知症へ進展した者の割合が低下した可能性が考えられるのか。 では、なぜそれが叶ったのだろう? 「国内外の疫学研究の成績によると、喫煙習慣、身体活動の低下などの生活習慣や高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病は認知症の発症リスクを高め、これらの危険因子は老年期のみならず中年期より認知症発症リスクに影響を及ぼすことが示唆されています。よって、喫煙率の全体的な低下、中年期~高齢早期の高血圧や糖尿病、脂質異常などの生活習慣病管理の改善、健康に関する情報や教育の普及による健康意識の変化などにより、認知機能低下の進行が抑制され、認知症の有病率が低下した可能性が考えられます」