認知症の将来推計が大幅低下? 健康意識の高まりと生活習慣病コントロールに活路あり
今年のGW明け、厚生労働省により、最新の『認知症高齢者の将来推計』が発表された。 引用元:「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」(九州大学)。色づけは編集部。 →www.eph.med.kyushu-u.ac.jp/jpsc/uploads/resmaterials/0000000111.pdf?1715072186 写真を拡大 それによると、団塊ジュニア世代が65歳以上になる2040年に、認知症の患者数は584万2000人になるという(65歳以上人口のおよそ15%)。 この数字を見て、「あれ、少ないな」と思った方はどれくらいいるだろうか。 同時に発表された、認知症の前段階であるとされている「軽度認知障害(MCI)」の2040年の推計数は612万人(同15.6%)で、両方を合わせると、「65歳以上の3人に1人が認知機能に関わる症状がある」ということになる(30.6%)。よって、「増えている」という印象を持たれた方もいるかもしれない。 しかしこの発表があるまでは、「2025年には認知症患者は700万人になる」とも言われており、2023年12月にスタートしたこの連載でもその数字を書いてきた。 そのため、今回の発表を聞いて、「少ないな」と私は思った。 実際、2025年(来年)における推計値を新旧で比べてみると、最新のものは471.6万人(12.9%)で、700万人と言われたとき(20%)から230万人も減っているのだ。 なぜこのような数字が出るに至ったのだろうと単純に思った。 そこで、調査を担当した九州大学の二宮利治先生と国立長寿医療研究センターの櫻井孝先生に、この数字の意味するところと、今後私たちが意識するべき事柄についてお伺いした。今回から、3回に分けてお伝えする。
2012年調査での将来推計
まずは、これまで認知症の将来推計を伝えるときに使っていたデータからご紹介しておく。 連載当初に使っていた700万人という数字は、筑波大学が発表した調査研究報告『2012年における認知症の有病者数』462万人(65歳以上人口の15%)に、長期の縦断的な認知症有病率調査を行っている「久山町研究」(→注)のデータを合わせて推計されたものである。 計算方法としては、2012年の調査時に15%だった認知症高齢者数が、2012年以降も各年齢層の認知症有病率が一定だと仮定した場合、2025年には65歳以上人口の18.5%となり、675万人と推測され、さらに2012年以降も糖尿病有病率の増加により上昇すると仮定した場合、推計値は700万人になる。 一方、今回の発表値は、2022年~23年に行われた大規模な調査に基づいたものである。 注:「久山町研究」とは、九州大学が福岡県久山町(人口約9000人)の地域住民を対象に、60年間以上にわたり行っている生活習慣病の研究のこと。www.hisayama.med.kyushu-u.ac.jp