バイエルンで前人未到の500勝達成! トーマス・ミュラーの歩みを振り返る
■デビュー戦は勝利ならず
そんなミュラーであろうとも、最初から勝てたわけではない。ミュンヘン出身のミュラーは10歳にしてバイエルンアカデミーの門を叩くと、すぐに頭角を現して2008-09シーズンにトップチームデビューを果たした。そのシーズンから監督に就任したユルゲン・クリンスマン(現:韓国代表)の下、ブンデスリーガ開幕節ハンブルガーSV戦の79分に投入されてデビューを飾ったが、ミロスラフ・クローゼに代わってピッチに立った18歳は見せ場を作れず。チームも2点差を追いつかれてドロー発進となった。 デビュー戦の翌日、ミュラーはバイエルンのセカンドチームで3.リーガ(ドイツ3部)の試合にフル出場。そのシーズンは大半をセカンドチームで過ごすこととなり、トップチームでの出場は5試合のみ。それでもデビュー戦以外の4試合は見事に勝利を収め、チャンピオンズリーグ(CL)のスポルティング戦で記念すべき初ゴールもマークした。当時のバイエルンは過渡期にあり、シーズン途中にクリンスマン監督を解任すると、リーグ優勝を逃して無冠に終わった。 前途多難なスタートを切ったわけだが、そもそもミュラーはデビューできない可能性もあったそうだ。クリンスマンは「いつかNetflixのドラマになるかもね」と、偉大な選手に成長したミュラーについて冗談を飛ばしたことがあるが、彼がミュラーにデビューのチャンスを与えたのは“もう一人のミュラー”のおかげだという。数々のゴール記録を持つクラブレジェンド、“爆撃機”こと元西ドイツ代表FWのゲルト・ミュラー氏(2021年に他界)である。 クリンスマンは小さい頃からゲルト・ミュラーに憧れていたそうで、当時バイエルンのセカンドチームでコーチを務めていた彼のもとを頻繁に訪れたという。そこで特別な得点感覚を持つトーマス・ミュラーという若手を推薦されたのだ。クリンスマンは18歳のアタッカーをトップチームに呼ぶために電話をかけたが、その場で応答はなく、後で留守電を聞いたミュラーは慌てて電話をかけ直したそうだ。