【観光振興と地方創生の秘策】“非観光事業者”がツアーを企画、青年会議所のアドベンチャーツーリズムが見せた可能性
JCが先頭となる意味
観光と地域創生を繋ぐ媒体になるのはどのような組織でもよいのだが、JCの特徴はその若さと多分そこからくる学習能力の高さとアジリティであろう。もちろん700もあるので地域のLOMごとにその差は大きいと思われるが、うまく運営されたときには新たな動きを紡ぎだすことも可能となる。 それは2021年に工場の祭典を取材したときにも感じた。新潟県の三条市と燕市は古くから作業工具・刃物といった金属製品や洋食器等「金物の町」として知られていたが、過去数十年にわたり金属製品の出荷額は減少し地域の産業基盤が弱体化していた。そこで17年から「工場の祭典(こうばのさいてん)」という、工場・耕場(農産物)・購場(地場産品購入可能店)をめぐるイベントを開催している。 これは観光振興としてはまだ初期的なのだが、興味をひかれたのは燕市と三条市が協力し、双方の工場が一体となってこのオープンファクトリーイベントを行った点であった。実は燕市と三条市はある意味ライバル関係でなかなか協力が容易ではなかったのだが、双方のJCのメンバーが中核となり、行政の支援等も経てこの協力イベントが実施されたのだ。 これは過去の関係性にこだわらない若手経営者が主体となるJC故に可能だったのではないかと筆者は想定している。この工場の祭典はある地域の例だが、今回のインバウンド観光プロジェクトにおけるアドベンチャーツーリズムの着地型商品開発が全国レベルに広がっていく期待は十分にある。
池上重輔