「君たちはどう生きるか」展 第二部 レイアウト編(三鷹の森ジブリ美術館)レポート。絵を描くことの営為、そして苦悩も見せる
東京・三鷹の三鷹の森ジブリ美術館で企画展「君たちはどう生きるか」展 第二部 レイアウト編がスタートした。会期は11月10日まで(日時指定の事前予約制)。 本展は、昨年7月に世界公開されたアニメーション映画『君たちはどう生きるか』の制作過程に着目したシリーズ企画だ。第一部 イメージボード編(2023年11月18日~2024年5月12日)に続く第二部では、アニメーション制作における設計図とも言える「レイアウト」のための絵を、実際に描かれた約1250カットのうち約200カットを公開するものとなっている。 開幕にあたり、同館館長の安西香月氏は報道陣への挨拶のなかで次のように語った。「企画を担当した宮崎吾朗氏よりレイアウトに関する展示案が上がった際、専門的な内容のため一般向けに公開するのは難しいのではないかと考えていた。しかし、原画スタッフの身にせまるような絵が会場に200点並んだいま、自信を持って皆様にお見せできるものであると感じた」。 また、本展の企画・監修を務めた宮崎吾朗氏は企画意図について次のように語った。「第二部ではレイアウトの絵"のみ"を展示している。『君たちはどう生きるか』は少数先鋭で7年をかけて制作された。ほぼすべて手描きでレイアウト作業を行っているのは、近年のアニメーションにおいては稀である。本展では、絵を描くことは楽しいだけでなく、大変であるということを伝えながらも、そのなかにある人の営為を見てもらいたい」。 アニメーション制作の初期段階で決定されるレイアウトは、分業制である制作現場にとっては非常に重要なものだ。宮崎駿監督の詳細なイメージを絵に落とし込むため、作業中は数多くの指摘が入り、1枚のカットのなかにも監督をはじめとする様々な担当者による筆跡が残されている。こういったレイアウト作業について宮崎吾朗氏は「現場の苦闘の始まり」であると語った。 実際、紙の表面には消しゴムの跡やシワなども数多く見られる。1枚のカットがブラッシュアップされていく過程を見れるという点においても貴重な機会と言えるだろう。 また、カットによっては表面を強くなぞったような跡も見受けられる。これはレイアウトが決定したのちに、美術スタッフがトレースした跡であり、1枚の絵からアニメーションの制作の流れを見ることもできる。この展覧会ではそういった制作サイドの視点から映画を追体験してみてほしい。 なお、三鷹の森ジブリ美術館は、美術館をより安全で快適に楽しんでもらうために日時指定の事前予約制を導入している。毎月10日の10:00から、チケットサイトにて翌月入場分を発売しているため、足を運ぶ際は要チェックだ。
文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)