台湾発祥の老舗書店に幕 創業125年、戦後東京に
東京・中目黒にある老舗書店「新高堂書店」が30日で閉店する。日本統治時代の台北で1898年に創業し、台湾の出版業界の礎を築いた。戦後は日本へ引き揚げ、拠点を移して営業を続けてきたが、125年の歴史に幕を閉じる。デジタル化の波に押され「街の本屋」がまた一つ姿を消す。 熊本出身で日本への割譲とほぼ同時に台湾へ渡った村崎長昶氏が創業。店名は台湾の最高峰「新高山」(現・玉山)にちなんだという。当初は文房具を扱ったが、その後書籍販売にも事業を広げ、台湾最大の書店に発展した。 村崎氏は台北市議などの要職も務めたが、戦後はほぼ全財産を置いたまま一家で大分へ引き揚げた。店の建物は中国大陸から渡ってきた国民党関係者が引き継ぎ「東方出版社」として再出発。日本語に代わって中国語を「国語」として普及させる役割を担った。 新高堂は1948年から東京で店を構え、現在は村崎氏のやしゃごにあたる梅田美音さんが5代目店主を務める。絵本や児童書を充実させ、地元密着の経営を続けてきたが、時代の変化に抗えず閉店を決断した。