『光る君へ』で平安と令和の接点を発見!歴史から親子で一緒に問題解決のヒントを見つけてみよう
豪華絢爛な住居、煌びやかな衣装、詩・音楽・散楽をはじめとする芸能など、国風文化が栄えた平安時代中期をはじめて舞台としているからこそ、あらゆる視点からの魅力が満載の大河ドラマ『光る君へ』。今回はストーリーとは少し視点を変えて、注目したのが〝語り〟。本作ではNHKアナウンサーの伊東敏恵さんが担当。趣味の1つが短歌で、小さい頃の将来の夢の一つは「絵本作家」という伊東アナウンサー。お母さんとしての視点からも、本作の楽しみ方をお伺いしました! ―今回、ナレーションとしてお声がけ頂いたとのことでした。その時の心境を教えてください! 大河ドラマはこれまで自分が関わったことのない作品だったので、嬉しいという気持ちがありました。 今だからいえますが、実はちょっとだけ『平安時代ってどうすればいいんだろう・・・』という不安がありました。 私自身にとってもあまり身近な時代ではなかったですし、平安時代や世界的に有名な紫式部という人物に対するイメージが固定化されたものがあるという印象があったからです。一方で、『これはどのようにドラマになって、視聴者の方々にどのように楽しんで頂ける作品になるのか』というイメージがつかなかったからです。 語りとして『絶対に足を引っ張らないようにやらなくてはいけないけど、・・・平安時代の大河ドラマってうけるのかな?』という想いもありました。 ただ個人的なことでいうと、〝話すこと〟よりも〝書くこと〟の方がものすごく好きなんです。 小さい頃から『絵本作家なりたい』という夢をもっていたり、日記を書き続けていたり、短歌などに関心があったので、紫式部に関する番組に関わるということに運命的なものを感じていました。 しかし、台本を読み始めたら、素人の不安なんて一撃!まず、想像をはるかに超えるまさにドラマのおもしろさを、台本を通して知りました。さらに、目の前で繰り広げられる演技やセットの世界が一体化した映像をみた時に、不安は一蹴され、今は楽しんでやっています! ―普段のナレーションとドラマとで変化や気をつけていることはありますか? 『事実に即して淡々と』ということをベースにはしています。 登場人物がストーリーの中で意味をもっているという事をにじみ出させなければいけません。そういう意味で〝言葉の立たせ方〟はドラマならではのポイントだなということを、私自身もやりながら勉強しているところで、強調して紹介しています。 ただ、それがまた出すぎるといやらしくなってしまうので、制作スタッフとも「淡々とやりましょう」というお話をしました。収録中にたくらみみたいなものが出すぎると「もうちょっと普通に読んで頂いて大丈夫でーす。」と言われたりもします。(笑) アクセント辞典にも載っていないこともたくさん出てくるので、読み方は制作スタッフや、考証の先生に確認して頂きながらやっています。「申文(もうしぶみ)」や「解文(げぶみ)」など、歴史の教科書でも読んだことのないような言葉を、腹落ちさせて読まなくてはいけないので、ものすごく難しいです。 どんなに丁寧にナレーションで伝えていても難しい単語が多数出てくるので、今回は、「知る・学べる大河ドラマ」でもありますから、字幕を出しながら見るもの今回の作品の独特の楽しみ方なんじゃないかなと思います。 ―ナレーションはどの段階でつけているのですか? 番組として放送される前の状態のものを見ながらつけています。 まだ音楽が入っていなかったり、スタジオで撮影したものは、撮影セットで、隠れすべきものがまだ隠されていなかったり、現場の作業音が少し残っていたりする映像を見て収録していることもあります。 事前の準備としては最初から最後まで作品をみて、『盛り上がりどころやその前の前章だな』『最後、次のお話に繋げるためのワクワクさせるシーンだな』など、自分の中でイメージを膨らませたり、設計したりしています。 オンエアーでみると、『これこそテレビだな』と感じます。 撮影、音響効果、音楽、ナレーションなどすべてがひとつとなり完成されたものは、自分がスタジオの中でみているものとは、全然違うものなのですごく新鮮な気持ちで、いつも家でみています。 どの番組でもそうですが、ナレーションはあくまでも説明なので、少ない方が理想的なのかなと思っています。だからこそ、ここでずれた語りをしてしまうと世界観が壊れてしまいます。分量は少ないけれど、熱量は多いというのが、改めて気づいたナレーションの重要な役割です。 ―今までを振り返って印象に残っているナレーションはありますか? 第1話の、最後の「まひろという少女の激動の運命が動き出した」というところは、『ここで始まる!』という想いを込めましたし、このコメントで語りの全てが始まったような感じがします。 『世界中でその名を知られているが実は知らないことも沢山ある〝紫式部〟。1000年経った私たちにも通ずる共通項などの、意外性に満ち溢れた大河ドラマが始まるんだよ、みてね!』という気持ちを込めて収録した記憶があります。 収録する中で「すこーーーし引いてください」などスタッフの方々とやり取りすることがあります。 語尾などでも、微妙な音の違いで全く伝わり方が変わってきますが、これは楽器と同じようなイメージです。自分と制作スタッフの皆さんが合致した微妙な音のトーンを、何度も撮り直すことなく本番で出すことができるように毎回鍛錬をしています。 ―イメージを膨らませるために訪れた場所や触れたものなどはありましたか? 「源氏物語絵巻」などを所蔵する五島美術館を訪れました。 また、実は、父親が京都府の出身であったり、親戚が京都丹後ちりめんの織元をしていたり、と京都や着物の文化にもささやかな接点があります。母は、昔からの着物を今も大切に保管しています。先日久しぶりに実家に帰り、改めて、「こうした昔からの日本の文化のすばらしさも、ドラマを通じて少しでも伝わるといいな」と感じました。 今回のオファー後に改めて実家に帰って、母が集めていたたくさんの着物を『昔ながらの日本の大事なものを伝えられたらいいなと』思いながら見てきました。 ―絵や短歌が趣味とのことでしたが、習い事としてはじめたのですか? 絵は小さい頃に習っていたのですが、短歌に関しては独学です。 祖母が短歌をやっていたこともあり、『文字数などの制約をもって表現するっておもしろいな』と思って、独学で始めました。詠んだ歌を新聞に投稿して、またそれが載るようになると手ごたえがあっておもしろくて投稿は、10年ほど続けていました。 俵万智さんもずっと大ファンだったのですが、学生時代には俵万智さんが選考者となっていたコンクールに応募をして、選ばれたこともあるんです!そうやって手ごたえがあると『もっと勉強してやってみよう!』となりました。 今回、ドラマに携わったことをきっかけに、改めて本格的に勉強したいなとも思っています。 私自身の経験では、昔から、絵や短歌など、自分が好きなことをやってみることができたのは、良かったんじゃないかと思います。自身が親になって気づいたのは、親が、「これをやってみたら?」と提示するのではなくの方から『やりたい!』という想いをもてるようなチャンスを作ってあげたり、それを安心して伝えることのできる環境をつくることの方が、大切かなと思っています。 私も子どもが小さい頃に、「これをやると良い」と見聞きした習い事をさせようとしましたが、全然ダメでしたから。(笑) 大人は『歴史を学んで欲しい』と思う反面、子どもたちは『なんで歴史を学ばなくてはいけないの?』と思いますよね。 これからの社会の課題を解決するうえで、過去がヒントになることもあると思います。 平安時代も様々な争いごとがありましたが、人々の知恵や交渉することで、あまり多くの血を流さずに時代と言われています。『なぜそのような時代を過ごすことができたのか?』という視点から本作をみると、知識も深まっていくと思います! ―〝中学生のお子さんがいるお母さん〟の視点から、今回の作品の楽しみ方を教えてください! 学びは興味深くなれる〝発見〟があると、『おもしろい!』となるはずなのに、暗記することが多くてなかなかそうではないですよね。 だからこそ、本作をみながら『当時の時計が十二支でできていて、午後0時のところが〝午〟にあたる。だから、正午の〝午〟という字を使うのか!』とか、現代との接点を見つけながらみてもらえるといいのではないかなと思います。 古文・漢文を学んでいる方々は、本作を通じてそれらを〝学ぶ意味〟に気づいてもらえたら嬉しいですね。 吉高由里子さんや柄本佑さんをはじめとする出演者さんのファンということも視聴のきっかけにしながら、百人一首などの文化に関心を寄せてもらい、『勉強する意味はここにあるんだ』と気づいてもらえたらと思います。 今回のドラマは、制作陣が平安時代中期を考証の先生方と膨大な時間をかけてミーティングしながら突き詰めていることから勉強にもなると思うので、学校の授業などでもみて頂けたら嬉しいです。
歴史人Kids編集部