「最低でも20分増」「終わらなければ残業」配送ドライバーを悩ます“再配達”と救う“置き配”のリアル
◆私たち消費者に与える影響
では、置き配のメリットとは何でしょうか。一番の利点は受取時に在宅していなくてもよいことでしょう。忙しい日常生活では、荷物の受け取りのために時間を拘束されたくないと思う人も少なくないはず。 また、再配達時の面倒な手続きが要らない点もメリットです。置き配であれば、再配達を依頼するために何桁もの問い合わせ番号を入力する必要はありません。置き配のメリットは“時間に縛られないこと”といえます。 非対面なので、受け取るためにわざわざ身支度をしたり、ドライバーに気を使ったりすることも不要です。食事の用意や子どもの相手などでどうしても手が離せないときでも重宝するでしょう。
◆3つの視点から見る置き配の課題
配送の担い手の負担を削減する置き配ですが、メリットばかりとはいえそうにありません。置き配に想定される課題を3つの視点から考えてみます。
▼1:防犯上の課題
玄関前や軒下に置かれた荷物は、悪意のある第三者から盗難されるリスクがあります。また、置き配の荷物があることで、不在が分かり窃盗に入られる心配も。
▼2:プライバシー上の課題
置き配されている荷物の宛名から名前や住所、性別などの個人情報が漏えいし、悪用されるケースです。個人が特定されるだけではなく、発送元や外装から荷物の内容が推測されてしまい、プライバシーが侵されてしまうケースも考えられます。
▼3:納品に関わる課題
置き配で戸外に置かれた荷物は雨ざらしなどによって汚損したり、炎天下で品質が劣化したりする荷物もあるでしょう。 また、置き配を指定したにもかかわらず、隣家に誤配されたり、指定場所以外に置き配されたりするなどの実態もあります。住所表示上、同じ住所に、複数の住宅が並んでいたり、表札がないため届け先を特定できないケースも。 宅配ボックスが満杯で入れられなかったり、大きな荷物が入らなかったりすることも頻繁に発生するそうです。オートロックのマンションでは、不在時はそもそもエントランスが開かないため、届け先の玄関前まで行くことすらできません。 置き配は、配送のラストマイルにおいてドライバー不足に対応する解決策の一つです。また置き配ポイントは利用者のインセンティブになる取り組みです。一方、置き配にはまだまだ課題があるのも事実。これからも安全に、確実に荷物が届く環境整備が不可欠ではないでしょうか。 <参考> ※1:国土交通省「令和5年度 宅配便・メール便取扱実績について」 ※2:Hint-Pot「『不在時に置き配利用したい?』2000人に調査 3人に1人が否定派、防犯上の懸念も」(2023年11月19日公開) 【この記事の筆者:蜂巣 稔】 物流ライター。外資系コンピューター会社で金融機関・シンクタンク向けの営業、輸出入、国内物流を担当。その後2002年から日本コカ・コーラにて供給計画、在庫適正化、物流オペレーションの最適化などSCM業務に18年以上従事。2021年に独立。実務経験を生かしライターとしてさまざまなメディアで活躍中。物流、ビジネス全般、DXやAIなどテクノロジー領域が中心。通関士試験合格、グリーンロジスティクス管理士。
蜂巣 稔