三日月大造・滋賀県知事に聞く「人口減少は不可避」(全文1)
2016年10月に総務省が発表した平成27(2015)年の国勢調査確定値で、大正9(1920)年の調査開始以来、はじめて人口減少に転じた日本。このまま人口が減り続けた場合、自治体としての機能を果たせない地域が出てくると危惧されています。そうした中、人口減少が進む地方の首長は、どのようなビジョンを持ち、政策を行っているのでしょう。 首長インタビューの第1回は、2014年に48年ぶりに人口減少に転じた滋賀県の三日月大造知事に話を聞きました。(インタビューは2016年12月に実施)
滋賀県はつい最近まで人口増加県だった
──滋賀県は全国的にも珍しい人口増加県だった。大阪でさえ人口減少を迎えているというような状況だったと思うが、なぜ、滋賀だけつい最近まで人口増加タームだったのか。要因を分析いただきたい。 一つは、京都、大阪、また中京圏との距離の近さ。距離は近いけれども自然が豊かっていうのがあって、よくそれを僕たちは、ほどほど都会ほどほど田舎と言うんですけれども、そういうことも要因で、京都、大阪に通勤通学する人たち、また岐阜や愛知に通勤通学する人たちが、住むなら滋賀ということで、たくさん住まれたことも要因ではないかなと思います。と同時に、滋賀県には日本を代表するグローバル企業の工場や研究所がたくさん立地していて、また、大学も今13あって、かなりたくさん立地していて、3万人以上の大学生がいますので。そういう意味で働きに出る人たちだけじゃなくて、滋賀を働く場所とか学ぶ場所にする人たちも増えてきたことが、周りは減るんだけれども、滋賀は増える要因だったのかなと思いますね。
──大学とか企業は、そもそもなぜ、来てくれたのか。 それぞれの理由があると思うんですけれども、一つは地の利ですね。交通が便利。関空にも中部国際空港にもほぼ90分エリアですし、中京の港、阪神港、そして敦賀港にも100分以内で行けるっていう意味では、非常に物流の便利なところですし。水がありますね。つまり、水があるっていうのは、水の利っていうのも実は大事で。工場で物を冷やす、もしくはコカコーラの原料を作るとか。あと、あれはP&Gさんでしたかね。世界で流通しているSK-IIのほとんどは滋賀県で作ってる。 ──SK-IIの中身を。 SK-IIの中身。化粧水を。 ──そうなんですね。 あと、サントリーのウィスキーは、醸造は京都の山崎でされるんですけれども、12年、18年、24年と寝かせるのは滋賀県なんです。エイジングセンターっていうのがあるんですけれども。それはなぜかっていうと、災害がなく、気候が安定しているということもあって、そういう場所があったり。こういうことも企業がたくさん立地する一つの理由だったかもしれません。 で、最近、立地される研究所に、なぜ滋賀県に立地してくださったんですかって聞くと、自然豊かな場所で研究者が研究するほうが発想が豊かになるということをおっしゃって。琵琶湖を見ながら、四季折々の山々を見ながら研究をしてもらうんだと言ってくださることは大変嬉しい評価だなと思っています。 ──大学についてはどうか。 大学も、一つはやっぱり地の利だと思いますし、あと、当初は土地の安さだとか、そういう自治体がぜひ大学を誘致したいという、そういうことに乗ってこられたんだと思いますが、今は、そういった企業との産学連携ですとか、あと、地域とのつながりの中でのいろいろな地域課題の解決ですとか、そういう、また違う要素で大学が立地をしてきていたり。平成27年ですか、龍谷大学が農学部を新設されて、平成30年には立命館大学が食科学部という新たな学部を創設される。平成29年に、滋賀大学がデータサイエンス学部という新たな学部を創設される。そういう農学部だとか、食科学部だとか、データサイエンス学部っていうのは、まさに滋賀で物を作ったり、物が流通したりするそのデータを、例えば解析したり、地域の中に地域とつながって農業を営んだりということを模索する大学があるということですね。嬉しいことだなと思っています。 ──他の地域から滋賀の大学に学生が来て、普通だったら、卒業後に地元に帰ると思うが、そのまま、滋賀の企業に就職したりとかは多いのか。 そうしてほしいと思っています。せっかくこんなにたくさんの大学生が来ているのに、就職っていうことになると、結構、県外に流れることが多いので、それをぜひ、滋賀県で滋賀県の企業や職場への就職につなげたいなということで、さまざまな取り組みをしています。例えば、琵琶湖っていうものとの結びつきを大学生に持ってもらおうということで、琵琶湖上で研修をしたりとか。あとは、私たち自身も大学に出掛けていって、滋賀県のいろんな取り組みとか、滋賀県の魅力や価値や可能性について直接話をして、そして、仕事をするなら、住むなら、滋賀県って面白いぞということを語りかけたりしています。