東京都財政は本当に豊かなのか? 宣言延長受け、100万円の協力金即決
都が“ポン”と出せる訳
それはともかく、カネを出す側、膨大な臨時出費に追われる地方の懐具合は厳しい。本来なら借金を重ねるのではなく他の費目を削ってやり繰りすべきだが、いまその余裕はない。まずは感染拡大を止め企業倒産を防ぐことに注力すべき状況だ。 注目してもらいたいポイントがある。都が出す協力金(50万円か100万円)と他の道府県が出す30、50、100万円という休業協力金はカネの出所が違うという点だ。都の場合、自前のサイフからポンと出す。他府県の場合、国のサイフから地方へ配られた「地方創生臨時交付金」から出す。つまり自己財源ではなく、依存財源からの支出であるということだ。 もっとも、都民の納めた税金か国民の納めた税金かの違いはあっても、私たちが負担するカネであることに違いはない。とはいえ、国が差配できない財布(上述の通り7割が自主財源)を持つ都は別格。他は「3割財政」といわれ自前の財布は3割程度だ。
財政調整基金を食いつぶす
第1次の都の緊急コロナ対策は8000億円だったが、これに協力金向け約1000億円を含む約2000億円が加わる。そのカネは「財政調整基金」から全額出すとのこと。この「基金」は家庭でいう貯金箱で、不況などで税収が大幅に減少し行政サービスが回らなくなる事態を避けるためのカネだ。財政再建で苦労した石原慎太郎都政4期目、2011年度の3986億円から粛々と貯め19年度末で過去最高の9345億円まで積んできた。それを取り崩しコロナ対策でほぼ使い切るというのだ。 もちろん、国のように際限なく赤字国債で賄(まかな)うというやり方よりはマシだが、基金の趣旨からは逸脱している。「このような危機のときこそ使うべきでは?」との反論もあるかもしれないが、小池都政はコロナ禍の前から基金を切り崩して予算編成をしている。親が貯めてきた貯金を訳知らずの子が勝手に使うようなものとも言える。 こうしたやり方はそう長くは続けられない。もし更なるコロナ対策が必要となるなら赤字都債に手を出すことになる。五輪・パラリンピックの延期にも少なくない予算が必要となる。この先、ヒトが老いインフラが老いる「老いる東京」問題には毎年数兆円のカネが掛かろう。税の大幅減収が予想される新型コロナを受けた不況を前に「都の気前よさ」は今だけであろう。