X はブランドを多大なリスクにさらすプラットフォームに。MRCの監査離脱が意味するもの
記事のポイント XはMRC(Media Rating Council)のブランドセーフティ認定取得のための外部監査から撤退し、将来の再開は未定。多くの広告主にとって第三者機関の認定は広告投資の大前提。 イーロン・マスク氏の経営のもとで、Xはブランドセーフティを謳いつつ真逆の動きを見せ、広告主が離脱。Xの広告事業は苦境にある。 Xの2023年の広告収入は前年比54.5%減の予測で、広告主の信頼を失っている状況が示されている。 「X(旧Twitter)は広告を出稿するのに安全な場所だ」と言われれば、広告主はそれを(無批判に)信じるしかない。不幸なことに、Xによるこの自己申告を第三者機関によって検証することは不可能となりそうだ。 Xは先頃、MRC(Media Rating Council)のブランドセーフティ認定取得を目的としたアーンスト・アンド・ヤング(Ernst & Young)による第三者監査から手を引いた。いますぐ正式な外部監査を継続できない理由として、Xはリソース面での制約と技術的課題を挙げているが、MRCの広報が米DIGIDAYに語ったところによると、将来的な再開の余地は残しているという。 コンテンツレベルのブランドセーフティについては、Xは2023年初めに事前評価プロセスを完了し、審査を受けているが、その後に正式な監査プロセスを開始していない。そのためMRCの広報は、「Xの『審査中』のステータスを解除し、定期的に行うステータス情報の更新時にこの変更を公開するつもりだ。MRCの審査を正式に再開しないかぎり、Xは『審査中』とは見なされない」と述べている。
MRCの監査は広告投資の大前提
Xの広告事業がもう少しましな状況であれば、監査を受けることにもっと前向きだったかもしれない。広告事業が好調であれば、こうした認定取得にかかる時間や予算を正当化しやすい。というのも、多くのマーケターにとって、多額の広告費を使うなら、投資先のプラットフォームが第三者機関の認定を受けていることは大前提であり、取得にかかるコストなど十分に元が取れるからだ。 アドテク業界を監視する非営利団体チェックマイアッズ(Check My Ads)の共同設立者であるナンディニ・ジャミ氏は、「リソース面での制約とは、『ブランドセーフティ認定の取得に必要な金がない』ということだろう。実際、外部監査には大きな費用がかかる」と述べている。「実に深刻な問題だと思う。なぜなら、広告主はブランドにとって安全でないプラットフォームに広告を出したがらないからだ」。 わずか2ヶ月前のMRC認定に対する見解とは大違いである。当時、XのMRC認定は単に遅れているだけで、同団体とXの正式な監査に関する協議は継続中ということだった。しかし、その後の数週間のどこかで事態は変わった。現在、Xの内部でブランドセーフティの機能が働いているか否かは不明である。 リンクトイン(LinkedIn)を見る限り、Xで「ブランドセーフティのグローバル責任者」を任された最後の人物はロサンゼルス在住のエリアナ・ティエリー氏だ。ティエリー氏の就任は2023年6月となっているが、9月には同氏のプロフィールが更新され、現在はブランドセーフティを担当するマーケティングマネジャーとしてSpotifyに在籍しているようだ。一方、同じくリンクトインのプロフィールによると、2023年10月にカリフォルニア州在住のJJアサートン氏がYouTubeからXに「ブランドセーフティ担当のシニアプログラムマネジャー」として移籍している。ただし、Xは同氏の就任を正式に発表していない。 このような状況は、ブランドセーフティ関連の認定取得の取り組みに水を差しかねない。Xのような予測不能のプラットフォームにおいてはなおさらだ。実際、X内部でブランドセーフティの監査監督を必要以上に難しくしているのは、こうした責任者や担当者の離職にほかならない。