X はブランドを多大なリスクにさらすプラットフォームに。MRCの監査離脱が意味するもの
Xはブランドセーフを謳うも大手広告主は離脱
監査を後回しにする一方で、Xのサイトには「MRCのブランドセーフティ監査に全面的にコミットしており、MRCおよびアーンスト・アンド・ヤングと積極的に連携し、監査範囲の合意等、必要な作業を緊急に進めている」と記載されている。 いつものことだが、マスク氏の経営下にあるXでは、しばしば言行が一致しない。 つい先月、Xはブログ投稿のなかで、過去1年間にブランドセーフティ関連のツールが前進したこと、インテグラルアドサイエンス(Integral Ad Science)をはじめ、業界屈指の第三者測定機関と連携していることなどを誇らしげに語っていた。 しかし、先週の出来事のあとでは、そうした成果も虚ろに聞こえる。 10月15日、マスク氏は自らが所有するXで、反ユダヤ主義的な投稿に賛同するようなコメントを投稿し、このやりとりはその後広く拡散した。同16日にはメディア監視団体のメディアマターズ(Media Matters)が「XでApple、ブラヴォ(Bravo)、IBM、オラクル(Oracle)などの企業の広告が、ヒトラーを賛美したり、ホロコーストを否定したりする投稿と並んで表示されている」と報告した。この報告を受けて、IBM、Apple、ディズニー(Disney)、ワーナーブラザースディスカバリー(Warner Bros. Discovery)、ライオンズゲート(Lionsgate)らは、Xへの広告出稿を停止した。Xに批判的な立場を表明しているのはブランドだけではない。CNNもXに投稿した動画で広告主のプレロール広告(Amplify)を停止したことを認めている。 マスク氏によるTwitter買収以降の混乱にもかかわらず、Xでの広告出稿を続けていた広告主たちも、この一連の出来事はさすがに腹に据えかねたのだろう。Apple、CNN、ディズニー、IBMも出稿を続けていた広告主だ。
2023年の広告収入は50&以上減
こうした広告主の反発にもかかわらず、Xのリンダ・ヤッカリーノ最高経営責任者(CEO)は、広告を出稿するブランドにとって、Xは安全なプラットフォームだと主張しつづけている。同氏はまた、広告主が安心してXとつながりを持てるように、各種の安全対策を強化する決意を繰り返した。 米DIGIDAYはXの広報を通じてヤッカリーノ氏が従業員に宛てた11月20日付けの電子メールの全文を入手した。以下はその抜粋である。「誤解を招く操作された記事のせいで、一部の広告主は一時的に出稿を停止しているかもしれないが、データは嘘をつかない。Xで働く我々全員にとって、反ユダヤ主義や差別を許容する場所は世界のどこにも存在せず、これらと戦う我々の努力は極めて明確である」。 だが実際には、同氏のメッセージとは異なり、広告主たちはXへの出稿をためらっている。 AJLアドバイザリー(AJL Advisory)の設立者でCEOのルー・パスカリス氏はこう話す。「Xに広告投資を続ければ、それは現在の所有者であるマスク氏の言動を支持することになる。大手広告主のまっとうな経営陣であれば、ブランドを多大なリスクにさらすような広告投資を許したりしない。XがTwitterと呼ばれていた頃とは異なり、今日の広告市場において、Xにのみ提供可能なメリットなど存在しない」。 数字がこれを裏づける。 インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)の最近の予測によると、Xの全世界での広告収入は、2022年末現在で41億4000万ドルだが、2023年末は前年同期から54.5%の大幅減を喫し、18億9000万ドルとなる見込みだ。2024年には、ここからさらに4.3%減の18億1000万ドルに落ち込むと予想されている。 [原文:Brand safety concerns mount as X (formerly Twitter) pulls out of MRC audit] Krystal Scanlon(翻訳:英じゅんこ、編集:分島翔平)
編集部