107歳まで生きた美術家・篠田桃紅さんの作品館を開館。「努力で成るものは、たかが知れてますわよ」の言葉に自分の指針を修正しながら
言葉はいつも丁寧で、私のような年下の者に対しても「おやりになるんですか?」とおっしゃいますから、常に緊張したものです。電話の際、私はペンと紙をそばに置き、先生のお話しになったことを一言一句、漏らさないように記録しました。それが段ボール一箱分はあります。 いまの場所に再オープンした際、年齢的に先生をお招きすることは叶いませんでしたが、このような葉書が届きました。 「長い間大変でしたね。でも、ぬごとであったと思います。少しお休みくださいね。無為は大切です 桃紅」 どういうことが書いてあるか、すぐにはわかりかねましたが、ぬごとの「ぬ」は完了形。「やらなければならないことだったんですね」という意味です。先生は私の信念をわかってくださっていました。 そして、がむしゃらに頑張らず、静かに時を重ねることも大切ですよ、と。私は涙せずにはいられず、感服し、そして感謝しました。これは、101歳の先生からいただいたお便りです。 (構成=小西恵美子、撮影=大河内禎)
篠田桃紅,松木志遊宇