三菱UFJはネット証券再編で劣勢挽回なるか…“消える”auカブコム証券【経済ニュースの核心】
【経済ニュースの核心】 三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)とKDDIが共同で出資するネット証券とネット銀行の資本関係を再編する方針を固めた。来年1月末にも、三菱UFJが「auカブコム証券」へのKDDIの出資分(49%)を、KDDIが「auじぶん銀行」への三菱UFJの出資分(22%)をそれぞれ買い取り、完全子会社化する。 【写真】杉原杏璃さんは巨乳グラドルから“億り人”に「投資したい人が集えるシェアハウスを、50歳までに建てたい」 新しい「少額投資非課税制度(NISA)」の拡大など投資熱の高まりを受け、それぞれの注力分野に経営資源を集中するのが狙いだ。三菱UFJは完全子会社化を機に、「auカブコム証券」の名称を、自行名を冠した「三菱UFJeスマート証券」に変更し、個人向け事業を一段と強化する。両社は、資本関係の見直し後も生成AI(人工知能)の活用でノウハウを持ち寄るなど関係を継続するとしている。 だが、この報道を額面通りに受け取る金融関係者は少ない。「両社の協働は当初の思惑通りにうまくいってはいなかったのではないか、とくに三菱UFJには、このままではネット証券戦略で競合他行に劣後したままになるとの危機意識が強かったようにみえる」(金融筋)というのだ。 実際、「auカブコム証券」の足元の口座数は約175万で、三井住友フィナンシャルグループ(FG)が資本提携関係にあるSBI証券の1300万口座、みずほフィナンシャルグループ(FG)が資本提携関係にある楽天証券の1100万口座に大きく水をあけられている。NISAの口座数(6月末)についても、楽天証券が552万口座、SBI証券が504万口座であるのに対し、「auカブコム証券」は27万口座に過ぎない。 ■金融庁から業務改善命令 そうした危機感を募らせる三菱UFJの背中を押したのは、6月に露呈した三菱UFJグループ内でのファイアウオール(業務障壁)違反だった。三菱UFJ銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券の3社は、法人顧客の非公開情報を顧客の同意なく共有していたもので、金融商品取引法違反として金融庁から業務改善命令を受けた。ガバナンスの不備ともいえる事案で、経営陣が報酬の一部返上を決めるなど責任を問われた。「三菱UFJにとっては、まさに痛恨事、証券戦略の立て直しは急務となった」(メガバンク幹部)とされていた。 今回のKDDIとの資本再編は、そうした三菱UFJの証券戦略における交通整理の意味合いもある。果たして三菱UFJは劣勢を挽回できるか……。 (小林佳樹/金融ジャーナリスト)