燃え殻エッセイ 僕が覚えた「足裏もみ」が大人になって役立った話 「風呂場で思い出すのは若き日の父の姿」
「えっ! そうなんですか?」彼女はそう言いながら、もうスニーカーを脱ぎ始め、靴下もスルスル脱いで、僕の太ももの上に素足をポンと置いてきた。 「足の裏、揉み合いっこしましょうよ」 彼女は国民的スマイルでそう言う。周りのスタッフは、仮死状態のように眠っている。目的地までは、あと一時間とちょっとはあった。僕は彼女の足裏をとにかくグイグイ揉み、彼女もまた僕の足裏をグイグイと揉んでくれた。揉むたびに、「うっ! きもちいい」と国民的に正しいかは甚だ疑問なリアクションが、彼女の口から漏れる。祖母があの頃言っていた通りだった。足裏マッサージがうまいと、良いことがあった。僕はグイグイと彼女の足の裏を揉みながら、亡き祖母に最大限の感謝をしていた。
燃え殻 :作家