かぶりたくなる自転車用ヘルメット開発へ…警視庁や学生ら、着用率低迷を「おしゃれ」で打開目指す
自転車のヘルメット着用率が低迷する中、警視庁が無印良品を展開する「良品計画」とヘルメットの共同開発を進めている。デザインのアイデアを考えるのは流行に敏感な学生たち。目指すのは誰もが「かぶりたい」と思う、おしゃれで安全性能の高いヘルメットだ。(中薗あずさ) 【ひと目でわかる図解】ヘルメット非着用だと致死率上昇
「髪形気になる」
「前髪が崩れるのが気になるよね」「紫外線カットできるのがいいな」。東京・桜田門の警視庁本部。青山学院大の男女3人が、会議室で市販の自転車用ヘルメットを手に取り、アイデアを出し合っていた。
3人は警視庁が良品計画や同大と進める「みんなのヘルメットプロジェクト」のメンバー。同大のサイトで募集したところ、商品開発や物作りに関心がある学生が集まり、書類審査や面接を経て12人が選ばれた。
発足のきっかけは、昨年7月の調査で、都内の自転車ヘルメット着用率が全国平均(13・5%)を下回る10・5%だったこと。都が昨秋、非着用の理由を尋ねたアンケート(複数回答可)では、「置き場所がなく、荷物となる」(37・5%)「髪形が崩れる」(31・8%)などの声が上がった。
警視庁は、生活雑貨が幅広い世代に支持されている良品計画に協力を呼びかけた。同社はこれまで自転車のヘルメットを販売していないが、警視庁との共同開発が「社会貢献になるなら」と参画を快諾した。
学生のアイデアを基に、来年秋以降の製品化を目指しているという。メンバーで同大3年の北原美緒さん(21)は、「同世代の人が『かわいい』と思うヘルメットを作りたい」と語る。
致死率1・5倍
警察庁によると、昨年までの5年間に自転車乗車中の事故で死亡した1898人のうち、54%の1023人は頭部に致命傷があった。事故時の致死率は非着用が着用の約1・5倍だった。
頭部を守るヘルメットは、バイクの場合、道路交通法施行規則で、重量や衝撃吸収性能、視野を妨げない構造などの安全基準が定められている。だが、自転車のヘルメット着用は昨年4月施行の改正道交法で「努力義務」になったが、義務ではない。このためヘルメットについても、法令に基づく基準は設けられていない。