組織の機能を使い切るには? 四国コカ・コーラ ボトリングで気付いたシンプルな「組織営業」の基本
「営業は断られてから始まる」と言われる。だが、話術だけで成約に導けるほど甘くはなく、1度成功したアプローチが2度通用する保証もない。「買う・買わない」の決定権を相手が握る中、営業担当にできることは何か、すべきことは何なのか? 本連載では、日本一の営業成績を認められ、初めて地方ボトラーから日本コカ・コーラへの出向を果たした山岡彰彦氏の『コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』(山岡彰彦著/講談社+α新書)から、内容の一部を抜粋・再編集。顧客視点や組織力の大切さに気付いていく学びの足跡をたどる。 第6回は、著者が組織営業の醍醐味に気付いた、ある展示会のエピソードを紹介する。 ■ 組織営業の醍醐味 最近は組織で営業をすることが当たり前のように言われていますが、現実に目をやれば組織の機能を使いきれていないのがほとんどではないでしょうか。 私も同様にきちんと組織だった営業を進められている訳ではありませんでした。人の意見を聞いたり、間に立って調整したりが億劫になり、どうしても独りでやってしまいがちになります。そもそも営業に携わる大半の人が組織で営業を進めると言われても、何をすればいいのかがわからないのではないかと思います。 そこでフードサービスに異動した時に学んだ「いままでの見方を変える」というところに立ち返ってみました。自分たちの営業の仕事を俯瞰して使えることで、見えてくるものがあったのです。 一つの製品がお店で販売されるまでには、アイディアを出す人、それを企画する人、原材料を調達する人、製品にする人、製品の広告・宣伝を考える人、それを運ぶ人など多くのプロセスがあります。 私のような営業担当者は、たまたまその製品を取引先に説明し、それを届ける地点に立っているだけなのかもしれません。そう考えると組織における営業活動を進めていくさまざまなアプローチが見えてきます。 フランチャイズシステムでビジネスを進めるチェーン店の多くでは、毎年加盟店向けにその期の方策や商品施策を伝える展示会が開催されます。 これからこんな売り場づくりを進める、今期はこういった商品を戦略的に展開していくとの方針が示され、ちょっとしたホールのような特設会場に売り場を再現して、実際に商品を並べて実店舗に近い環境で加盟店の皆さんに説明するのです。 私が担当するコンビニチェーンの山梨地区でも今期の展示会が開催されることになりました。私たちの施策、新商品を加盟店にアピールするまたとない機会です。山梨地区担当の小宮山さんと一緒にどうアプローチするのかを考えます。 これまでは毎回自社の商品を持って行き、そこで紹介してもらっていたのですが、どうしても、より好条件を出した競合の品に良い場所を取られてしまいがちです。それは自分たちへの関心がその分薄くなってしまうことにもつながります。 この状況をなんとかしたいのですが、いままでのやり方がそれなりに進んでいれば、多くの担当者はあえて変えることはしたくはないと思ってしまいます。展示会のような手の掛かる場での変更はかなり大変になることが見えています。 「小宮山さん、どうする。このままではじり貧だよね」 「うん、何か手を打たないとマズイよね」 そう簡単にアイディアなんか出てきません。二人で押し黙ります。そこでまず小宮山さんと考えたのは、いままでのやり方を思い切って白紙にして、ゼロから何をするかを決めようということでした。