組織の機能を使い切るには? 四国コカ・コーラ ボトリングで気付いたシンプルな「組織営業」の基本
ではどうするのか。単に製品を紹介するのではなく、チェーン全体が今期、進めることに合わせて、「自分たちはこんなことをします」というメッセージを伝えることにしてはどうかというゴールの設定です。構造的にはそのメッセージの下に新商品や販促サポートを置くという位置付けです。 では何を伝えるのか。そこでもう一度相手の目的・戦略をきちんと確認しようということになりました。早速、地区本部にアポを取ります。 次にそれをどうやって伝えるのかということです。この戦略をなぜ進めるのかという背景をしっかりと伺い、この売り場、この商品ならば今期の目的に向けて、こんな良いことがあるといったストーリーを見せてはどうだろうと考えます。 いままでの商品陳列や商品特性の説明ボードだけでは、加盟店の人たちに真意が伝わらないから、世の中のトレンド、さらにそれを先取りする今回の新商品を売ることのメリットを踏まえたストーリーボードをつくってはどうだろう。そこに地域のトピックスを交えたらいいんじゃないか。 お互い好き勝手を言いながらもいろいろな発想が飛び出してきます。その後、チェーンの先方からもらった意見や情報と社内の複数の部署から提供を受けた情報でストーリーができあがりました。 「どうやって」の部分は、自分たちのグループ会社が行った展示会の資材を担当者が融通を利かせて貸してくれることになりました。小宮山さんが上司に相談したところ、連絡をとってくれたのです。 まさに組織だった連携でそれまでとはまったく違った展示会が開催され、チェーン本部と協働で進めた私たちの施策を加盟店に伝えることができたのです。当時はコンビニエンスストアが毎年、伸長していた時代なので、この取り組みがどの程度効果があったのかはわかりませんが、その期の業績は前期を大きく上回ることができました。 展示会を終えた日暮れ間近、二人でトラックの荷台に腰を掛け、会場で用意してくれたお弁当をいただきます。その時、小宮山さんがぽつりとつぶやきます。 「今回は本当にみんなが力を貸してくれたなぁ。それもこれもいままでのやり方にこだわらなかったからかなぁ」 幕ノ内弁当を突つきながら話します。 「それぞれの部署に自分たちが目指すことや力を貸して欲しいことを正直にお願いしたからでしょうか」 ご飯を頰張りながら優等生っぽい返事をしますが、そう外れていないはずです。同じ会社で目指していることは同じだからです。その目的のために協働でやっていきたいと声を掛けているだけです。組織営業の最初の一歩はそんな一言ではないかと思います。
山岡 彰彦