体育館のエアコンに格差? 「避難所」の学校では設置加速 地域差も
年々夏の暑さが激しさを増す中、公立小中学校の体育館にエアコンを設置する動きが加速している。 災害時、体育館は避難所になることが多いが、エアコンなしの避難生活は熱中症になる危険性が高いためだ。一方、避難所に指定されていない学校体育館がエアコン設置から置き去りにされることを心配する声もある。【石川宏】 避難所となる体育館へのエアコン設置を巡っては、国民民主党が自民党との政策協議の中で要請し、石破茂首相は11月29日の所信表明演説で言及。国会で審議中の今年度補正予算案に779億円が計上されている。 文部科学省によると、全国の公立小中学校の冷房設備設置率(9月1日現在)は普通教室で99・1%、特別教室で66・9%なのに対し、体育館は18・9%にとどまる。 地域格差も大きく、東京都が88・3%と突出して高いが、長崎県は0・4%、富山県は0・6%で1%以下だ。静岡県は全国平均を上回る20・5%だが、河津、長泉、吉田の3町が100%なのに対し、浜松市や沼津市、三島市など27市町は0%だ。ただし、この設置率はスポットクーラー(可動式送風機)を含む数値で、長泉町も現在稼働しているのは送風機だ。 固定式エアコンの設置へ、県内市町も動き始めた。 長泉町の北小学校体育館ではエアコン計10台の取り付け工事が進んでおり、1月には稼働できる見込みだ。町地域防災課の椎田清隆課長は「町北部は大雨などによる土砂災害の危険性があり、広域避難場所である北小に避難所が開設される可能性が高い」と北小への設置を優先させた背景を説明する。 北小の宮崎崇教頭は「体育館は風が抜けず熱がこもった。可動式送風機は送風機の前しか涼しくならず、体育館全体は暑いままだった。とてもありがたい」と歓迎する。設置には経済産業省の外郭団体の補助金が得られるという。 補正予算の成立を見越し、県東部の保守系議員で作る「沼駿伊豆地区学校施設整備促進議員連盟」(会長、勝俣孝明・衆院議員)は7日、伊豆の国市でエアコン設置に向けての勉強会を開いた。 予算計上を歓迎する声が広がる中、松崎町議からは「津波浸水区域にあるため小中学校の体育館は避難所に指定されていない」と補助要件を満たさない現状が報告され、河津町議からは「断熱材工事をすると古い体育館の耐震性が問題となる」との懸念が出された。 また壁と天井への断熱材設置を含む設置費用は平均6000万円かかり、国から2分の1の補助があるとはいえ、財政が乏しい市町では厳しいという声も漏れた。体育館へのエアコン設置で、猛暑対策は一歩前進しそうだが、今後、新たな地域格差が生まれることも懸念されている。