NZでラグビーを始め、セントトーマスカレッジの1軍で活躍。SHの中尾一心は、日本でプロ選手を目指す。
二人三脚でのNZ生活。母に感謝。
最終学年となる3年生になった今年の8月3日には、クライストチャーチの街中にあるハグレーパークでクライストカレッジとの試合がおこなわれた。Miles Toyota Premiershipのレギュラーシーズン最終節だ。勝ったチームがカップトーナメントの準決勝進出を決める大一番だった。 試合前におこなわれるハカは、まさに睨み合い。会場は緊張感に包まれていた。 序盤は両チームに固さもが見られミスも目立つ中、互いに2トライを重ねる。STCが 14-12と2点のリードでハーフタイムを迎えた。 しかし、後半は勢いに乗ったクライストカレッジに4分、7分と連続トライを奪われ、逆転される(14-24)。 それでも後半25分までに29-24と追い上げ、なおも逆転を狙い、リスタートのキックオフから果敢に展開した。しかしミスからターンオーバーを許し、一気に自陣深くまで押し戻される。27分にはPGでさらにリードを広げられ、8点差(24-32)のまま逃げ切られた。 終盤まで手に汗握る展開となった好ゲームを、八潮さんも傍で見守っていた。愛犬の”Bruno “( 一心曰くの自身の一番のサポーター)を連れて毎試合欠かさず応援に駆けつけているのだ。 「今までお疲れさまと言いたいです。いつも頑張っている姿に感動していました。たくさん楽しませてもらいましたし、元気を分けてもらっていました。悔しい思いはこの先で成長できる糧になると思って、一生懸命頑張ってほしいです。そして何より楽しんでほしいです」(八潮さん) 17日にはMiles Toyota Premiershipのプレート(レギュラーシーズン5位から8位による試合)の決勝がおこなわれ、STCが序盤からトライを重ねて31-17でセントビーズ・カレッジを破った。
高校最後の試合を勝利で終えた一心はまず、母への感謝を伝えた。 「(八潮さんは)強い体を作るために色々考えて美味しいご飯を作ってくれました。いつも試合を観に来てくれて、応援してくれてありがとうと伝えたいです。これからも夢に向かって一生懸命頑張ります」 充実した高校ラグビー生活を過ごせた。 「(準決勝に進めず)とても悔しく残念ですが、この経験は次のステージに活かしたい。セントトーマスは自分の持ち味を活かして、自分の判断力に任せてプレーさせてくれました。とてもやりがいがありましたし、自分の成長に繋がりました」 卒業後の進路については、「日本でのプレーを考えています」と即答。大学進学を検討しているが、プロ選手としてプレーできる環境があればその選択肢も捨てない。 「自分の一番の夢は日本にいる祖父母が元気なうちに、プロになって頑張る姿を見てもらうことです」 テンポが良く、素早くボールを捌くSHにとって、レベルの高いクルセイダーズ地区でのプレー経験は今後、日本でプレーするにしても財産となるだろう。語学力を活かして、留学生などの海外出身選手と日本人選手との架け橋にもなれる。今後の活躍も目が離せない。 (文:松尾智規)