みずほ、楽天カード出資交渉の内幕 楽天Gの金融再編難航で利害一致
みずほ側のキーマン
電子商取引(EC)サイトとともに、楽天ポイントを軸に利用者に自社サービスの利用を促す「楽天経済圏」。その屋台骨を担うカード事業への、みずほFGからの出資受け入れ検討の本格着手に合わせて、楽天Gはこれまで計画していた金融事業の再編を見送った。 これまでは楽天銀行を中心に楽天カードや楽天証券などを1つのグループにまとめ、金融事業の収益力を高める計画だった。当初は24年10月の再編を予定していたが、検討に時間を要するとして25年1月にいったん延期。今回のみずほFGからの出資検討を受け、取りやめることになった。 みずほFGは楽天証券に49%を出資している。みずほ証券は楽天証券と新たに立ち上げた共同出資会社を通じ、楽天証券の顧客などを対象にオンラインや対面で資産運用相談に応じるサービスを今年4月に始めた。楽天Gとタッグを組むメリットを直接感じる立場にあるみずほ証券の浜本吉郎社長は、みずほFGの中でも「楽天Gとの連携を深化させる旗振り役」(みずほ銀行幹部)という位置付けだ。 楽天が金融子会社の再編を断念したのには、「東証プライムに上場している楽天銀行の傘下にカードや証券を収めるという考えに、金融庁側がガバナンスの観点で難色を示した」(楽天G幹部)との事情があるという。 楽天Gによる金融事業の再編について、浜本氏は9月20日、日経ビジネスの取材に「アドバイスをしている。いろいろなアイデアが飛んでいる」と明かしていた。浜本氏らを通す形で、みずほ側も楽天Gの金融事業再編が難しい状況に置かれていたことを把握していたと見られる。 みずほFGには他のメガバンクグループのような有力なカード会社がなく、19年にはクレディセゾンとの包括提携も解消していた。三井住友FGがカード事業を中核に個人向け総合金融サービス「Olive(オリーブ)」を打ち出しており、三菱UFJFGも三菱UFJニコスを傘下に持つ。みずほFGは、メガバンクの中でもカード事業関連の成長戦略が問われる状況にあった。それだけに、みずほFGの意気込みがにじむ。 あるみずほFG幹部は以前、「楽天カードに出資したい気持ちはあるが、のれん代が高すぎる」と語っていた。みずほFGにとって楽天カードへの出資は大きな事業シナジーと時間を買う効果が見込める。今後の交渉で価格面でどこまで折り合いを付けられるかが焦点となりそうだ。 みずほFGが国内トップを快走する楽天カードを取り込むことに成功すれば、金融業界の勢力図に大きな影響を与えることになる。
鳴海 崇、杉山 翔吾