プーチン大統領の使者東京へ 新ロシア大使に初の単独インタビュー 緊迫の80分
■「中国、インドは極めて重要な戦略的パートナー」
2つ目は中国について聞いたときです。ノズドリェフ大使は中国との協力関係をことさらにアピールしました。 ノズドリェフ大使 「中国は今までも、ずっとロシアにとって極めて重要な戦略的パートナーだと思います。13年にわたり、ロシアの貿易第1相手国だった。これからも発展していきたい」 ──中国はロシアを全面的に支える形では、できない。中国のロシアに対する姿勢は、半身な部分があると思うが、いかがでしょう? 質問中の「半身」という言葉に、大使の表情が敏感に反応し、きっぱりとした反論が返ってきました。 ノズドリェフ大使 「今のところ、まったく見当たりません。中国は、いろいろな面においてロシアに協力しています。特に経済面、技術面、国民の交流も盛んに行っています。今後も二国間関係を積極的に発展していきます」 一方で、北朝鮮との関係は、中国とインドを「極めて重要なパートナー」と繰り返し述べたのとは対照的に「隣国とは良い関係を築きたい」と冷めた言い方に終始しました。 現在のロシアは、北朝鮮やイランにとどまらず、中国、インドといった大国、グローバルサウスを味方につけ、アメリカを外した新しい多極的世界を志向していることがうかがえました。 ウクライナとの停戦の条件について答えを求めると、東部4州からの「完全撤退」、NATO(=北大西洋条約機構)加盟を諦めることなどと、事実上の降伏を求める姿勢を崩しません。 「ウクライナ軍は数多い犠牲者を出して不利になっているから、おそらく、あと1年~1年半くらいたてば、最終的に(降伏を)決断するのではないか」などと強気でした。
■24年前のプーチン大統領とノズドリェフ大使
ノズドリェフ氏は意外なほど、快活で社交的な人物でした。平時なら、たちまち東京に友人の輪が広がったでしょう。24年前、1期目の大統領就任後初の公式訪問で、東京を訪れたプーチン氏も当時、冷たい印象ばかりではありませんでした。東京の迎賓館で行われた晩さん会に内閣記者会代表として参加した私は、相手の目をジッと見るプーチン氏の思慮深そうな目が印象に残っています。握手した手は温かく、ぼってりと厚みがありました。 ノズドリェフ大使と互いに握手を求めることはありませんでしたが、別れ際、「これからも機会があれば、ぜひ議論を続けていきたいと思います。ありがとうございます」との言葉がありました。プーチン大統領が何を考え、日本、国際社会にどう向き合おうとしているのか。唯一開かれた窓となったノズドリェフ大使の発言から、何か事態の好転につながるヒントはないか。私たちは引き続き、目をこらして取材していきたいと思います。 (報道局長・伊佐治 健)