【#佐藤優のシン世界地図探索㊻】シン東京地図図鑑<2>「勝ち組女子の幸せと哀しみ」
佐藤 そうでしょうね、それに近いかもしれません。要するに貴族ですよ。 ――そういう意味では、階級というのはやっぱりあるんですね。 佐藤 それはもしかしたら、戦前の日本への回帰かもしれませんよ。 ――なんとすさまじい話の広がり方でしょう! 佐藤 戦前の三井物産の社員は一年で家が建ったと言います。社員と雇員に分けていましたから。大多数が雇員ですよね。 ――元祖・非正規雇用、派遣社員のような......。戦前は大学への進学率が5%。三井物産の正社員になるのは、すごく大変でしょうね。 佐藤 だから、そういう時代に戻りつつあるんですよ。 ――一方、『東京女子図鑑』の主人公はアパレル会社を辞めて、銀座のグッチに転職する。 佐藤 そこの女性の上司はなかなかすごかったですね(笑)。 ――はい(笑)。最初の面接で放ったお言葉、「1985年は何の年?」。自分は思わずTVに向かって、「私はオールナイトニッポン水曜一部のパーソナリティとしてデビューしました」と答えてましたが、違いました。男女雇用均等法が制定された年なんですね。 佐藤 このドラマは良く取材していますよね。 ――はい。その後、主人公の女性は銀座で呉服屋の若旦那(既婚者)と出会う。色々と一流のモノを教えてもらう。で、今度は自分から別れ話を切り出して、修羅場になるのを恐れたものの、あっさりと若旦那は別れてしまう。そして、彼女は仕事ぶりが認められ、雑誌のインタビューを受ける。それを自慢しようと......。 佐藤 アパレルの同期会に出かけます。 ――雑誌に出ていたのを自慢しようとすると、元同僚たちはスマホに映った自分の子供自慢をし合っていて、雑誌を見せられなくなる。女性の集まりは実にえげつないです。 佐藤 それで、あのグッチの猛烈女上司に「あなた、もう仕事だけね」と言われていましたよね。主人公は「椅子取りゲームからひとりだけ、外れているような気がしませんか?」と猛烈女上司に聞きましたが、猛烈女上司からは「追い打ちをかけるようで悪いけどね、私、結婚してるの、子供もいるのね。結婚と子供はおまけみたいなもんね」と言われてしまいます。 ――主人公は奈落の底に落ちる。 佐藤 そして、結婚相談所に登録して婚活を始めますが、男は逃げて行きます。なぜなら、登録している男は女の年齢しか関心がないからですね。 ――とても、辛辣な人生です......。 佐藤 そして、婚活事務所のスタッフに注意されます。「そのお召しもの、考え直した方がいいんじゃないでしょうか? 贅沢症の付いた金のかかる女にしか見えませんよ」とね。 ただ良いなと思った男は、ちゃんと婚活マニュアルに書いてある台詞を主人公に言われて、見事に引っ掛かってしまいましたね。 ――あの婚活シーンがリアリティに溢れているのは、東京カレンダーが婚活事業をやっているからですね。 佐藤 そうです。ナンパや大学時代のサークルといったところで知り合うことが出来ないまま、その年齢になってしまった男女たちだから、ああいった産業に頼らないといけないわけです。結婚が恋愛至上主義から変化してきているということですよね。 ――タイパを考えての婚活と。その婚活結婚したふたりは豊洲のタワマンに住むことになりましたが、あれは何でですか?