「G7サミット」で“崖っぷち”の岸田首相は日本国代表として何を語ったのか? 2日間のセッション内容を振り返る
セッション3「ウクライナ情勢」
昨年5月の広島G7に続き、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が参加。ジョー・バイデン米大統領とも会談した。 会談後に両首脳は会見に臨み、10年間の2国間安全協定に署名したことを発表した。ゼレンスキー大統領は、「今日は本当に歴史的な一日だ」と笑顔を見せた。 G7首脳声明でも、従来よりも一歩踏み込んだ。 〈 私たちは、ウクライナの自由とその再建のための戦いを、可能な限り団結して支援する。ゼレンスキー大統領の立会いの下、私たちは凍結したロシアの国家資産のうち着手可能な500億ドル近くの利子を活用することを決定した。そうしてプーチン大統領に、誤りのないシグナルを送っていく。 私たちは、ロシアの軍産複合体を武装解除し、資金提供を停止するための集中的な努力を、ステップアップさせていく。(以下略)〉 当然ながら、ロシアは怒り心頭である。この協定と、15日にスイスで行われたウクライナサミットに向けて、14日にウラジーミル・プーチン大統領が、テレビで緊急演説を行った。 「ロシア軍の停戦と引き換えに、ウクライナはドネツク、ルハンシク、ヘルソン、ザポリージャの各州から軍を引き揚げる必要がある。ウクライナはNATO(北大西洋条約機構)への加盟を断念しなければならない。 ウクライナがそのような決定を下す用意があり、これら4州から本格的に軍の撤退を始め、NATO加盟計画の放棄を正式に発表するなら、ロシア側は直ちに、停戦のための交渉を開始する……」 このようにロシア側の主張は、1)東南部4州のロシアへの割譲、2)ウクライナのNATO加盟放棄、と一貫している。 こうした目まぐるしい出来事があったため、15日に行われた岸田首相のぶら下がりでも、冒頭からウクライナ問題について、長広舌をぶった。 「ロシアによるウクライナ侵略の問題は多くの時間を割いて議論を行いました。その中でまず私からは、戦況が厳しさを増す中にあって、G7として引き続き結束してウクライナを支援することの重要性、これを指摘するとともに日本としても、『今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない』――こうした考え方の下、引き続き対ロ制裁とウクライナ支援、これを強力に推進していく、こういった考え方を述べました。 そしてその結果として、ウクライナ支援のためのウクライナへの新たな融資の枠組み、これを立ち上げることにことでG7として一致をした。さらにはこの第3国の団体による対ロ制裁回避、そして迂回の試み、これは厳しく対処しなければならない。こうしたことでG7として一致をした。 その制裁回避そして迂回の試みには厳しく対処しなければならないということについては、日本としてもこの中国等の第3国に所在する団体に対する措置を含む新たな制裁パッケージ、これを検討しているということを説明いたしました。こうした連携をしながら措置を取っていく、こういったことによって対ロ制裁の効果を高めていく。こういったことにつながると期待をしているところです。 そして日本として特に強調したこととして、ロシアによる核の威嚇、ましてや使用はあってはならない。このことは強調いたしました。この点についてもG7として認識共有できたと受け止めています。ロシアによる無責任な核による威嚇等について、最も強い言葉で非難することで一致をした次第です」 中国を迂回した制裁回避については、ウクライナ側がその中に、日系企業が中国で生産していた部品が含まれていたと暴露したりして、なかなか複雑だ。だが「核のない世界」を標榜する岸田首相だけに、核問題に関してだけは強調したかったと見られる。 15日には100ヵ国以上が参加して、スイスで「ウクライナ平和サミット」が開催された。だが、世界の帰趨を決める米中ロの3大国のトップがいずれも「欠席」する中で、迫力に欠けるものとなった。 第2次世界大戦に遡れば、カイロ会談もヤルタ会談もポツダム会談も、「大国のボス」が集結したから物事が決まったのだ。特に、大統領選の資金集めパーティを優先させて帰国したバイデン大統領は、世界のリーダーとしての資格があるのだろうか?