「G7サミット」で“崖っぷち”の岸田首相は日本国代表として何を語ったのか? 2日間のセッション内容を振り返る
【6月13日】セッション1「アフリカ、気候変動、開発」
トップバッターに「アフリカ問題」を持ってきた理由について、メローニ首相はこう述べた。 「イタリア政府は、私たちすべての将来にとって極めて重要な大陸であるアフリカに、多大な関心を注ぎたいと考えた。困難とチャンスを抱えたアフリカは、私たちがこれまでにしばしば示してきたアプローチとは異なるアプローチを必要としている」 言葉は優しいが、現在ヨーロッパは、特に南欧に位置するイタリアは、アフリカからとめどなくやって来る違法難民に頭を焼いている。そしてこの問題を根本的に解決するには、アフリカで続く紛争や内戦をストップさせるしかないと考えているのだ。 ヨーロッパでは、2010年代の移民・難民に寛大な時代は終わり、どの国も「受け入れ反対」を掲げる政党が選挙で勝利する傾向が顕著である。メローニ首相自身、そういった声をバックにのし上がってきた。 そのことに加えて、今世紀に入って中国が絶大な影響力を誇ってきたアフリカを、再びヨーロッパの側に引き戻したいという意図も透けて見える。中国経済の悪化によって、中国とアフリカとの関係が、「カネの切れ目が縁の切れ目」とばかりに、やや微妙になってきているからだ。 さらに、昨年9月のニューデリーG20(主要国・地域)サミットで、AU(アフリカ連合)が、G20の正式メンバーとなった。来年の議長国は、南アフリカだ。来年は国連創設80周年にもあたり、国連で「最大勢力」と言えるAUのパワーは増しているのである。 岸田首相は、すでに30年以上にわたって開催してきたTICAD(アフリカ開発会議)の第9回会議を、来年8月に日本で開くことなどを強調していた。
セッション2(ワーキングランチ)「中東情勢」
首脳宣言では、昨今の中東情勢について、こう謳っている。 〈 私たちは、2023年10月7日にハマスと他のテロリスト集団が、イスラエルに対して起こした残忍なテロ攻撃を、再度、最も強い言葉で非難する。そして、イスラエルとその国民に対する全面的な連帯と支援を表明し、イスラエルの安全に対する揺るぎない関与を再確認する。 イスラエルは自身を防衛する権利の行使にあたって、すべての環境において、国際人権法を含む国際法を完全に順守しなければならない。 私たちは、ハマスが自身の軍事行動のため、継続して民間インフラを使用していること、そしてガザにおいて、自身を民間人と隔絶することを怠っていることを非難する。 私たちは、民間人の人命の損失を、同様に遺憾に思うとともに、受け入れがたい数の民間人犠牲者たち、とりわけ女性や子供の犠牲者たちを、大きな懸念を持って留めおく。かつすべての当事者に対して、民間人の生命を保護するあらゆる可能な措置を講じることを呼びかける。(以下略)〉 このように美辞麗句を並べたものの、G7の中で、パレスチナを国家として承認している国は1ヵ国もない。わずかにイギリスの野党・労働党が、7月4日の総選挙で勝利して政権を担ったら承認するという公約を掲げているだけだ。 岸田首相も、「人質解放・停戦を巡るバイデン米大統領のイニシアティブを強く支持する」と述べたにとどまった。これは5月31日、バイデン大統領が提起した6週間の停戦を始めとする停戦案で、6月10日に国連安保理で採択された。非常任理事国の日本も賛成している。 それにしても、日本はエネルギーを中東に頼り切っているというのに、もう少し中東問題に本気で取り組んでもよいのではないか。昨年は日本がG7の議長国だったにもかかわらず、10月に紛争が起こって以降、G7で最も存在感が薄いのが日本である。