物流ドライバーを苦しめる「腰痛」問題! 米国の衝撃“1ドル強盗事件”が浮き彫りにした経済損失の現実
腰痛発生率、一般の4倍の実態
2011年6月、米国ノースカロライナ州で元物流ドライバーの男性が1ドルを強盗したとして服役することとなった。 【画像】トラック運転手の「驚きの年収」公開! グラフで一目瞭然! 男性によれば、長年の運送業務で背中の神経に異常をきたし、仕事を続けられなくなったという。強盗の理由は、背中の神経腫瘍と椎間板の2箇所の破裂によって働けなくなり、適切な医療を受けるための金銭的余裕がなかったことだとされている。 米国の医療費は非常に高額であり、男性はそのため医療を受けることができなかった。結果として、1ドルを強盗し、服役中に医療制度を利用して社会復帰を果たすことを考えたという。この事件は、米国における ・医療アクセス問題 ・物流業界における腰痛問題 というふたつの重要な課題を浮き彫りにした。 本稿は、特に後者の物流業界における腰痛問題に焦点を当てて深掘りしていく。さらに、日本の物流業界における腰痛の現状を調査した結果、物流関係者の腰痛発生率が一般の 「約4倍」 に達していることがわかっている。高齢者や障がい者などの交通弱者支援に携わってきた筆者(伊波幸人、乗り物ライター)は、腰痛予防の重要性を訴える立場から、この問題に対するさらなる対策が必要だと考えている。
座る姿勢で腰痛悪化
物流業界における腰痛は、もはや“職業病”といえるほど深刻な問題となっている。 厚生労働省の報告によれば、陸上貨物運送事業の腰痛発生率(死傷年千人率)は全業種平均の0.1を大きく上回る0.41であり、物流業界における腰痛の発生率は一般の職業に比べて約4倍高いことが明らかになっている。 具体的な事例としては、厚生労働省の資料に納品先で台車を使って運搬中、荷物が倒れそうになり支えた際に腰に痛みを感じ、その後1か月間の休業に至ったといった報告がある。腰痛の原因は多岐にわたる。 ・荷下ろし時の腰への負担 ・長時間の運転による振動 ・座った姿勢での圧力 ・不規則な勤務がもたらす心理的な負担 など、さまざまな要因が複合的に影響している。 このように、米国に限らず日本においても物流業界と腰痛の関連性は深い。特に座る姿勢による腰への負担が大きいことが一般的に認識されており、立っている姿勢よりも座っている姿勢の方が腰に与える負担が大きいとされている。